人形の見る夢
人形の見る夢
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:その他

公開開始日:2012/03/05
最終更新日:2015/07/17 11:20

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人形の見る夢 第4章 うさぎ
“この人形はある意味では欠陥品なのです”


店の主人から十分に説明は受けていたし、それを承知して白夜を買い取った。

日に当たることは出来ない、視力はほとんどない。繊細な人形の中でも特に、耐久性がない。それが白夜だった。


だが、可愛い子だ。



白夜は紺のシーツの上に行儀よくまっすぐに仰向けになり、腹の上で両手を組んで寝ていた。

そうやっていると、まるで棺桶で寝ている吸血鬼のようだと、前はよくからかっていた。ガラスケースの中で過ごした時間が長い白夜は、その姿勢が一番落ち着くらしい。

しかし、最近は気温が高くなってきたからか、白夜の体調が思わしくなくて、そんな冗談を言う気にはならなくなった。

まるで、……。



「マスター、お帰りなさい」


起こそうか逡巡しているうちに、白夜は気配で目が覚めたらしく、俺に向かって腕を伸ばした。白夜はほとんど見えていないのに、何故か俺のことだけは間違えなかった。同じ様な背格好の人間が数人いても、必ず俺に向けて微笑んだ。


「ああ、ただいま。
食事は済ませたか。何か一緒に食べようか?」


「ううん、いらない。
さっきメイドさんがジュース持ってきてくれたから」


「二口、三口飲んだだけだと言ってたよ。白夜の好きな桃がある、今剥かせてるから一緒に食べよう」


白夜はバレていたか、と苦笑してベッドから起き上がった。

白夜は夏が苦手だ。
去年の夏もそうだった。外の光を完全に遮断し空調を整えた室内にいても、夏バテのような症状を起こす。

そして、俺に心配をかけまいとしているのか、体調が優れないのも食欲がないのも、隠そうとする。

余計心配になるよ、と言っても改善は見られなかった。



「桃じゃなくて、違うのがほしい」


「ん?何なら食べれる?」


「マスターが欲しい」


血液の色を透かせた血管が走る腕が、そっと俺の肩に乗せられて、気づいたときにはちゅっと口づけられていた。
唇をねらったのかもしれないけど、キスは唇と頬の間だった。



「‥白夜、」
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