人形の見る夢
第3章 チョコレート
ショコラを連れてきて一年目、
元気が良すぎて手に負えないくらいだった。
二年目、花も恥じらうほどに美しくなったショコラに溺れるように恋した。
三年目、ずいぶん振る舞いも落ち着いてきた。誰にも見せたくなくて、だけど誰にでも自慢したくなるほど可愛かった。
四年目、ショコラが傍にいて過ごす日々が当たり前になっていた。彼は俺の伴侶だった。
五年目、ショコラは少しずつ元気がなくなっていった。けれど、苦痛も不安も、一言だって口にしなかった。
あの店の店主に相談もした。
しかし、その時点でショコラは作られてから六年以上が経過していた。時間なのですと、告げられた。
唯一、限られた時間を引き延ばす方法として提案されたのは、ショコラをガラスケースに戻すことだった。
けれど、ショコラは拒否した。
“最後の時は、マスターの腕の中がいい”
ショコラは生涯、大人にならなかった。 人間の外見で言えば、二十歳を迎える前だった‥。
俺はもう二度と、人形を買うことはない。
15