人形の見る夢
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成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:その他

公開開始日:2012/03/05
最終更新日:2015/07/17 11:20

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人形の見る夢 第3章 チョコレート

「‥不思議だな、たった一ヶ月見なかっただけで、ずいぶん大きくなった」



あの男性は、あれから度々店に来ては、チョコレート色の子を優しい目で見つめていた。


今回は、一ヶ月ほど店に顔を出さなかったけど、久しぶりに来て、感慨深げにため息を吐いていた。


チョコレート色の子は成長期よろしく日増しに大きくなってる。もう女の子には見えなくなった。けど、その分綺麗になった。


男性の方も相変わらず綺麗で、店にいた他の客が人形じゃなくて男性を見ているほどだ。黒檀のような髪と瞳をした、繊細で華やかな容姿をしている。

着ている物はとても上品で、それを無理なく着こなしていた。

きっと、本物の裕福な人だ。


「綺麗になったでしょう?」


「ああ、見違えて綺麗になった。
なるほど、店主の仰るとおりだ」


マスターは、誉められて、いつになく嬉しそうだった。
この分だと、チョコレートの買い手は、この男性に決まりのようだ。




「可愛いな‥。性格はどんな子なんだろう」


「怖がり、よ。大人しいし」


男性は突然喋り出した私に驚いたようだけど、直ぐにニコリと笑った。


「他には?」


「照れてる。あんまり見つめてるから」

「照れ屋なのかな」


見つめ過ぎだと言ってるのに、繊細な外見の割に、案外神経は図太いのかもしれない。


「‥、でもほって置かれるのは寂しいみたい」


一ヶ月も見に来なかったくせに、と睨んでみれば、またニンマリと笑う。


「寂しがりなのかな?」


「まだ、子どもなの」


だから、まだ連れていっては駄目よ。




「‥では、まだ譲ってはもらえないか」

「あっという間、ですよ。
もう少しお待ち下さい」
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