人形の見る夢
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成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:その他

公開開始日:2012/03/05
最終更新日:2015/07/17 11:20

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人形の見る夢 第3章 チョコレート

チョコレート色の彼は、恐々私に声をかける。


「‥‥‥こんばんは」


男の子は嫌い。
でもこの子は小さいし、昼間マスターにも虐めてはいけないと叱られたばかりだ。
それにこの子は、まだ当分店にいるのだし、仲良くしなきゃいけないから、返事をしてあげることにした。


「こんばんは、買い手が決まって嬉しい?」


「解らない。
ガラスケースから出るの、怖い」


この子はもしかしたら、少し変わった子かもしれない。大概、どの子も早くガラスケースから出て、自分のマスターを見つけるのを夢見てる。ガラスケースの中で時間(寿命)が尽きるのを恐れてる。 なのに、この子はガラスケースから出るのが怖いらしい。



それか、もしかしたら、


「‥まだ子どもなのね」


母の胎内で眠っている胎児のように、無理矢理に外に出されるのを怖がっているのかもしれない。



「君の方が俺より小さいじゃないか」


やっぱりこの子はまだ全然幼い‥。


「‥そうね、私の方が小さい」


見た目だけは‥。



「外、楽しい?」


「それぞれだと思うわ。私は楽しいけど。
だけど、ガラスケースの中が居心地いいなら、無理しなくていいのよ。
マスターはまだ、あなたを売るつもりはないみたいだから」


いずれは、ガラスケースの中は退屈で、窮屈になるわ。



「‥うん。ありがとう」


この子は、男の子じゃなくて
まだ“子ども”だ。


可愛い‥





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