春夏秋冬
第9章 柊 (続)
「‥兄ちゃん?、どうしたの?」
「っ!?」
びっくりしたっ‥
いつの間にか、光の双子の弟達が隣に立っていた。
泣きじゃくる光の肩を抱き締めたまま、固まる俺に、双子の視線が刺さる。
「兄ちゃんっ?、虐めたの?」
「兄ちゃんのこと、虐めたの?」
違うっ‥。
違うけど違うとは言い切れない。
「いや、‥あの」
「駄目っっ、あっち行ってっ、
兄ちゃん、離してっ」
春だか秋だか分からないけど、ソファー席に座っていた俺を押しのけて、光の隣に割って入る。
もう片っぽは、テーブルの下から潜り込んで、光の膝の上に乗り上がる。
「兄ちゃん?大丈夫」
「春、秋っ‥、」
光は俺から手を離して、泣き顔のまま弟達を抱きしめる。
抱きつかれた弟達はキョトンとしたまま、光の顔をうかがう。
「兄ちゃん?どうしたの?」
「春、秋、大好きっ」
「うん?、うん、大好きっ」
チビ達は、満面の笑みで光に抱きついた。
「‥、兄貴?
どうした?
何やってるんだ、あんたら」
遅れてきた風が、俺を押し退けて抱き合っている兄と弟達を見て、怪訝な顔をする。
だけど、双子達はご機嫌で兄に抱きつきたままだ。
「兄ちゃん、すきー」
「俺も兄ちゃんすきー」
風は、頑なに弟を抱き締めている兄と、はしゃいでる弟達を見比べ、最後に置き去りにされた俺を見る。
「‥何やってんだよ、本当に」
「きゃっ」
「きゃっ」
「風も好きっ」
鼻声のまま上の弟の名前も呼ぶと、
風は呆れたようなポーズをしながらも、顔を綻ばす。
「知ってるよ、恥ずかしいな。
俺だって、好きだよ」
本当に、仲のいい兄弟だ‥。
だけど、、、
「‥光、俺のことは?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥さあ」
さあって‥‥‥
確かに光は、俺がどんなに好きだと言っても、言い返してくれたことはない‥。
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