春夏秋冬
春夏秋冬
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/02/27
最終更新日:2013/07/21 19:34

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春夏秋冬 第9章 柊 (続)
「っ、、
行きたくないって、散々泣いたから。
母さん、
お願いだから、
“出て行って”、てっ。
訳の分からない男に目を付けられたお前が悪いって」



「すまない‥」


震えている光の肩を抱き寄せて、俺に寄りかからせると、ぽすっと、俺の胸元に身体を預けた。

カタカタと小刻みに震えているのが、身体から直接伝わる。



「風は俺があんまり泣いたから、村から逃がそうとして、見つかった。
縄で縛られて、俺と一緒に、丸一日、飲まず食わずで閉じ込められたっ」



「‥‥あの子の、腕の痣はそれか。
お前も、閉じ込められたのか」


「っ」


こくっと、頷いたのが、振動でわかる。


こんな年端もいかない子供達を、縄で縛って閉じ込めた…。それも、自分の育ってきた村の大人達が。


惨いことを‥、

だけど、俺には彼らを責める資格は、
ない。



光の家族を監視させ、確実に俺の元に光が来るように、敢えて、村に対して光を要求したんだ。

ひっ迫感した村の状況を考えれば、光やその家族が、どういう扱いを受けるかは予測出来ていた。


‥予測出来ていたんだ。

解っていて、敢えてそうした。
家族に光を引き渡すように求めれば、逃げられる可能性があったから。




「光、お母さんも村の人達も、責めるな。俺が、彼等を追いつめたんだ。
俺が悪かった」


「皓さま‥、」


光はぎゅっと 俺の服の裾を握ってしがみついてくる。縋り付くようだ。


「お前はきっと愛されていたよ。
こんなに優しい子に育ったんだから。
弟達もあんなにお前に懐いてる」


ひくっと、光の喉が鳴る。
いやいやをするように首が振られた。

きっと、今までずっといろんな事を溜め込んできたんだろう。
不安も寂しさも、慣れない生活のストレスも。

ごめんね‥。



「俺が愛してる
それじゃ駄目か」


「うっ、、駄目っ」


しゃくりあげながら、ぐずるように駄目っ、と繰り返す。



「‥ひかる、好きだよ」


「母さんはっ、俺のこと、好きじゃない、」


「あの人は、追い詰められていたんだよ…。俺にも、村からの重圧からも。
お前を手放すしかない寂しさや罪悪感からも、」


「母さんっ‥」
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