春夏秋冬
春夏秋冬
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/02/27
最終更新日:2013/07/21 00:33

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春夏秋冬 第9章 柊 (続)
移動中も、席に着いてからも、光と母親は一言も口をきかなかった。

光の母親が、息子が男に買われた事にショックを受けた事は、光の言動から何となく分かっていた。光が村の大人達を嫌っているのも想像がついていた。

だが、もともと母親と不仲だという情報は今まで耳に入らなかった。

光の気性からして、素朴で仲慎ましい家族だと思っていた。現に、弟達とはあんなに仲がいい。

だが、光も母親も、久しぶりの再会のはずなのに、あまりに冷淡だった。



「‥、私が月白です。
こっちが部下の潔。向こうに座っています田辺が光の世話役です。
今更とお思いでしょうが、ご挨拶に伺いました」


「遠いところ、ようこそお出で下さいました。私も、光の元気な姿を見て、ホッとしております。
おかげ様で、この通り弟達も元気に暮らしています」


言葉は丁寧だが、光の母親は下を向いたまま、俺の顔も光の顔も見なかった。

歓迎されてはいないと分かっていた。
罵られても責められても、受け止めるつもりで来た。
だが、久しぶりに会った自分の息子に対してまで、何故こうも‥。


しかし、無表情だった光の顔が急に崩れた。

ぽたぽたと涙を零す。


「‥‥‥母さん、迷惑なら、もう会いに来ない。
風やちび達は俺の弟だから、駄目だと言われても会うけど。
母さんには会いに来ない。だから、もうそんな顔しないで」


「光‥?」

何事かと、呆然とする俺達の前で、光は嗚咽を零して涙を流す。母親も光の言葉に驚愕したように目を見開いた。



「‥気づいてた、の?」


光は、泣きながら頷く。


「知ってたよ?調べたから。
俺は母さんの子じゃない。
母さんの妹の子だ。
‥俺は母さんの前からいなくなるよ。
だから、もうそんな顔しないで。
俺は大丈夫だから、思い詰めないで」


「「っ!?」」


光の言葉は俺も潔も、想像していなかったものだった。

状況についていけない俺達の前で、親子はお互いに泣き崩れた。


「ひかるっ、
ごめんなさいっ、ごめんなさいっっ。
貴方のせいじゃないって分かってた。貴方は何も悪くないって分かってたの。
だけど、辛くて、苦しくて」


「いいんだよ。
感謝してる。母さんはずっと俺のこと育ててくれた」


「‥ごめんなさい」


女性の肩をさすりながら、光は呆然とするしかない俺達を振り返った。
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