春夏秋冬
第8章 柊
言いにくいが、いつまでも悩んではいられない。また、明後日には王都行きだ。
今日こそ光と話をしようと思い、早めに仕事を切り上げて帰ってきた。
光は金平を作ったと言って、隣で酌をしてくれて一緒に夕飯を食べていた。
…言わなくては。
「………、光、あの、ね」
「はい?」
「年末年始、休みなんだよ。
年始は客が来るから忙しいが。
だから、年末に一緒に出かけないか?」
覚悟を決めたはずなのにはっきり言えない俺に、光は何故か、瞳をきらきらさせる。
「‥‥‥クリスマス、ですか?」
「クリスマス??、
ああ、そうだ、年越しの前にクリスマスだった…。ひか、欲しい物がある?」
そうだった。年末の前には子供とカップルの大好きなクリスマスだ。つい、自分の考えに一杯になって大事なイベントを忘れていた。
「クリスマスツリー、見たいです。
一緒に…」
「クリスマスか、俺は仕事で王都だけど一緒に行く?
あそこなら、大きなツリーが見れるよ」
「お仕事、ついて行ってもいいんですか」
「おいで、一緒にクリスマス過ごそう」
それで仕事が終わったら、そのまま、2人で旅行に行こうか」
「旅行、ですか?」
「そう、一泊二日で」
「どこにですか?」
「光、一度ご家族に会いたくないか?」
「な、に?」
不思議そうな顔をしていた光の表情が一瞬で固まった。
やはり、家族や故郷の話は光には鬼門だったか。
だか、この際はっきり言わなくては。
「俺は光のご家族に会ってない。
一度、光と一緒に会いに行きたい。
光は元気にしてますって、報告させて欲しい」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんで」
光は混乱しているのか、もった茶碗をテーブルに置いたり持ったりを繰り返す。
「嫌かな」
「‥、」
困ってるのか、光は小さく口元を震わせている。
「村に行くの、怖い…?」
光は微かに頷いた。
光は俺が無理やりに引き取った。
けど、実際に光を無理やり連れて来たのは村の人間だ……。
俺は、自分で光を迎えに行かなかったから。
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