春夏秋冬
第1章 春
光は腕の中でスー、と寝息を立てていた。いつの間にか眠っている。
小さな顔に長い睫毛が影を落として、泣いてばかりいるせいか目尻は赤く腫れていた。
昨夜はどんなに宥めても落ち着かなくて、泣くばかりでしょうがなく夜中のうちに部屋に帰した。
けど、今日はどうにか俺のとなりで眠った。あどけない寝顔が可愛い。早く自分のものにしてしまいたい。
光は俺の手元にいるのだから、もう焦る必要はないと判ってはいても、逸る気持ちは止められなかった。
けど、どんなに可愛い顔をしていても中身は全然お子様だ。
光の寝顔を眺めながら、そんなことを考えていると、
とんとんとん、と寝室のドアが叩かれる。潔だ。
「皓様、起きてる?」
「ああ、起きてる。入ってきてくれ」
半裸のままの光にしっかり布団を掛けてやって、ベッドから出た。
「‥‥皓様、少し眠った?」
部屋に入ってきた潔は俺の顔とベッドの中で丸まっている光を交互に見て眉を潜める。
「寝てない。少しうとうとしてたけど」
「感心しない。ただでさえ時間ないんだから、ちゃんと休まないと駄目だ」
「光を抱いてて寝てない訳じゃない。光が隣にいた方が、気が休まるんだ」
「…まだ、時々眠れなくなる?」
「そんなに心配するほどじゃない。
本当に駄目なら薬飲むし」
潔は困ったね、と呟きながら、着ていく服を準備して俺に渡すと、机の上に散らばっていた書類を順に重ねる。
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