春夏秋冬
第7章 金木犀
「お帰りなさいませ、皓様」
「っ!、
ああ、ただいま。元気にしていた?」
皓が車から降りると、光が飛び付きそうな勢いでかけてきた。ここに連れてきて以来、そんなに明るい光の顔を見たことかなかった皓は目を見開いた。
「はい。植木さん達も良くしてくれます」
「それは、良かった」
「皓様っ」
「うん?」
「…お帰りになりなさい」
光は皓の手から鞄を受け取りながらはにかんで微笑む。日の光を浴びて咲く向日葵のようだった。
あの日、皓が川辺で見とれた表情だ…。
「ただいま、光…」
「月白様、」
「橘と椿か、」
「お帰りなさいませ。お留守の間にお邪魔しております」
「いや、よく来てくれた。
潔から話は良く聞いているよ。光のこともありがとう。一ヶ月、よろしく」
「こちらこそ、一ヶ月よろしくお願いいたします」
その日の夕食は皓と潔に双子と光とでリビングでの食事になった。
椿は流石に皓の前では大人しくしていたが、代わりのように橘が、良く喋り、皓や潔の仕事の話を聞きたがった。
潔も可愛がっている学生達と最早家族のような皓と光とが揃い上機嫌だった。その賑やかで温かな食事のなかで光もくったいなく笑っていた。
光は家族のもとを離れて以来、正確には皓が現れて以来、ずっと感じていた不安と寂しさを忘れていた。
独りぼっちの夜は胸か避けるほど寂しかった。皓に抱きしめられて眠る夜だけが安心てきた。けど、その皓も一週間が経つとまた出掛けてしまう。
終わりのない寂しさが続いていた。
けど双子が来てから、少なくとも日中は騒がしいほどに賑やかだ。
二人も光に垣根を作らない。
親のいない彼らは、境遇は違えど家族と離れて暮らす光を弟のように扱った。逞しく生活している二人に光は感化されていた。
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