春夏秋冬
第1章 春
「苦しいっ!」
のし掛かるように抱き締められて、一瞬息が止まる。肩に食い込んだ指が痛い。
さっきまで穏やか微睡んでいたのに、突然興奮した皓に心臓が破れそうなくらい驚いた。
「な、なにっ…?」
「‥唇にして」
強引な動きに反して、皓の声はやけに静かだったが緊張が滲んでいた。
「や、怖いっ」
無理やり押さえつける皓の腕の中から抜け出そうともがくと、彼は疲れたようにため息を吐いて、腕の力を抜いた。
「我が儘、お子様…、怖くないって何度も言ってるだろう?
キスぐらいしてくれてもいいだろ?」
「いや…」
「泣くなったら…、
光は何で俺のところに連れてこられたか分かってる?」
呆れたような声に反して、落ち着きを取り戻した丁寧な指先が俺の乱れた髪を梳いた。
俺は金で買われた妾だ。
村の借金を皓が肩代わりするかわりに、俺は皓に差し出されたのだ。
黙っていると、皓が俺の顔にすり寄ってくる。柔らかくて滑らかな肌だった。
「頬でいいからもう一回キスして」
嫌だ、
そう思うけど、やらない限り皓も引く様子がなくて、しょうがなく、その白い頬に口づけた。
ちょんと触れるだけのキスをして離れたけど、皓はもう怒らなかった。そっと胸の深くに抱き寄せられて、耳元でお休み、と囁かれた。
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