春夏秋冬
春夏秋冬
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/02/27
最終更新日:2013/07/21 00:33

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春夏秋冬 第5章 百合

光を腕に抱いて、ベッドに入った。
最近ではこの時間が1日の中で一番優しい時間だった。
なのに、

「光…、」


返事はない。
あの夜から光は塞込むようになった。
良く笑うようになっていたのに、今は冷たい無表情を見せていた。



「光、何か喋って…。
俺はお前を手放せない。だけど、それ以外なら、なるべく光の意に添うようにしよう。頼むから、何か言って」


光がどれだけ泣いたって、故郷に帰してはやれない。やっと手に入れた温もりは、手放せない。



「‥外に出たい」



光の声を聞いたのは2日ぶりだった。
光はそれだけ言うと感情が決壊したかのように、瞳から涙が溢れだし、突然泣き始めてしまった。



そう、光はこうなるずっと前から外に出たいと言っていた。



「靴が欲しい。外に出たい」


ポロポロとこぼれた涙が、光の頬を濡らし、俺の寝間着の胸元を濡らした。





「‥‥‥わかった。靴を買おう。一緒に王都に行かないか?」


「え…、」


「明日、明け方に屋敷を出て、何時間も車に乗る。向こうに着いたら、俺は仕事だから光は一人でホテルで留守番しなきゃいけないけど」




「おうと」


光は舌足らずに、慣れない響きの言葉を繰り返す。

俺が一緒に行くかと言ったことが、信じられないとでも言うように、一瞬泣くのも忘れて、俺を見つめた。



「行ったことある?」


「いいえ…」


「一緒に行くか?
夜には、一緒に町に出て夕飯を食べよう。明後日には潔も王都に来るから、日中は彼と一緒に観光しても良い。
ホテルの生活が手狭になったら、迎えに来てもらって、光だけ先に屋敷に帰そう」




「行く、行きたい」


「よかった…。
ごめんね、本当はもっと良いとこに連れていってやりたかったし、ちゃんと一緒にいたかったんだけど」


遊びに連れて行くなら、ちゃんと予定を立てて子供が喜ぶようなところに連れていってやりたかった。こんな思いつきで行動すれば、スムーズに行くはずないし、第一潔に怒られる。


だけど、光に表情が戻った。
それが、嬉しかった。


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