春夏秋冬
春夏秋冬
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/02/27
最終更新日:2013/07/21 00:33

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
春夏秋冬 第3章 夕立
  
 ぐたりと弱ってしまった光に、しょうがなくタオルケットを掛けてやると、もぞもぞと身じろいで包まった。本当に子猫のような仕草に、色っぽさより可愛らしさがまさってしまって、苦笑する。
 
 「水持って来るから、楽にしてな」

 「は、い」

 ひとまず、返事がしっかりしていることに安心して、寝室から離れた。
脱衣所に戻って、戸棚から光の襦袢を拝借する。少し裾が足らないが、いつまでも素っ裸でいるわけにはいかないし、さっき脱ぎ捨てた物も濡れてしまった。風呂場から寝室まで俺が歩いた場所は通り雨でも降ったみたいに、びたびたに濡れている。これだから俺は、潔に生活能力が足らないと怒られるのだろう。だからと言って自分で床を拭く気もないのだから、我ながら処置なしだ。光に服を着せたら誰か呼んで、この惨状と濡れているだろうシーツを替えさせればいい。その前に、光に水だ。


 部屋の内線を取って、光の部屋に冷たい水を届けるように頼んだ。夕食はどうしましょうか、と困惑気に問う女中にまた連絡すると言って電話を終わらせた。光はすぐに食事は出来ないだろうし、俺もどうせなら彼と一緒に食べたい。もし今、電話に出たのが潔なら、我が儘と言われたかもしれない。


 程無くして、女中が部屋に水を運んできた。
俺好みの、足が長くて華奢な作りが美しいグラスに注がれた水を受け取ったはいいが、もっと他に適当な器はなかったのかとため息が出る。こんな繊細で綺麗なだけの使いにくいグラス、病人に水を飲ませるのに向くはずがない。もっと軽くて割れる心配のない丈夫な、そう、プラスチックのマグカップとかはないのだろうか。
 いや、ないな。うちにはそもそも、そんなものはない。

 …もしかしたら、光の周りは使いにくいもので溢れているのかもしれない。
良かれと思って揃えた美しい調度品も、光にとっては使いにくいだけで持て余しているのかも。だから、彼は未だにクッションを床にひいて部屋の隅に座るのだろうか。
 今度、本人と相談して、模様替えでもしてみよう。


 「ひかる?、水飲めそう?」

 「はい…、」

25
最初 前へ 22232425262728 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ