春夏秋冬
第2章 桜
ー潔versionー
まだ仕事の残る皓を王都に残し、先に帰路についた。
俺は先に戻って、皓が屋敷に帰宅した後、
すぐに次の仕事が始められるように整えて置くのが役目だ。
それと今回は、先日皓が引き取った、光という少年のこともあった。
彼は子供じゃないし、使用人達も十分にいる。
心配するようなことがあるとは思えなかったが、
皓が気にして身動きの取れない自分の代わりに、俺を早めに帰還させた。
後から思えば、この時の皓の判断は正解だった。
俺が皓と同じく一週間後に屋敷に戻っていたら、光は3泊の入院じゃすまなかったかもしれない。
まして、溺愛している少年のそんな姿を見た皓がどんな反応をするかを考えたら、
頭と胃が痛くなる。
皓は優秀な男だ。少し生活能力に問題があるとしても、できないことは何もない。
当主として領地の相続が確定した後も、どうしてもと望まれて王都の政務の仕事に席を残した。今は一週間毎に王都と領地を行き来する生活を続けている。
皓だから許され、可能にしていることだ。
だが、皓の心は疲れている。
一度に父と母と兄を失った悲しみは、未だに彼の心を疲弊させている。
そんな中で、屋敷の中にいながら衰弱していた光の姿なんか見せたら、
どんな反応をするかわかったものじゃない。
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