春夏秋冬
第2章 桜
定例の王都への出張から帰ってきた俺を迎えたのは、厳しい顔をした潔だった。
「光はどうしてる?」
「病院だ。入院してる」
「…はあ?」
「俺が王都から戻った時にはかなり衰弱していて医者に連れて行った。酷い風邪を拗らせていた」
「何故っ!?
女中達は何をしていたっ」
潔は俺から1日遅れて王都入りして1日早く引き上げていた。何故潔が帰るまで医者に連れていかなかったんだ。
「今回のことは俺の責任だ。すまなかった」
「違う、光の世話は女中達に任せていたはずだ。何をしていたんだ」
「…光は女中達に嫌がらせを受けていたようだ。具合が悪くても誰にも言えなかったんだ。
女中も光が食事どころか水にも手をつけないのを承知で放置していた」
「…馬鹿な」
自分の手が冷たく冷えていく。
食事どころか水にも手をつけなかった?…それを放置した?
殺す気か…。
「勝手なようだけど、彼女達は俺の判断で辞めさせた」
「…俺になんの相談もせずにか
?」
潔は俺の補佐官と世話役を兼ねている。女中の採用ぐらい潔の裁量に任せていた。だが、今回は話が違う。
「彼女達の処分は俺に任せてくれ。光の今後の生活を考えれば騒がない方がいい。
それに光にも問題はある。
女中達の嫌がらせがあったにしても、衰弱するまで何も口にしなかったのは正気じゃない。
もう少し、光には気を付けなきゃいけない」
「…どうして」
「あの子には専属の世話役をつける」
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