春夏秋冬
第11章 柊 終
光は、俺と伴に屋敷に帰ってきた。
弟達には泣かれたし、光自身も少し泣いていた。だが、光は村に留まりたいとは言わなかった。
今度こそ頻繁に連絡を取り合おうと約束して、次男である風が働いている店の住所なんかを確認していた。
もちろん、うちの屋敷の住所や電話番号も教えて、いつでも連絡するように言った。
あの村の辺りは、例え商店でも、まだ電話が一般には普及してない。やり取りは、手紙が中心になりそうだった。
塞ぎ込むんじゃないかと心配したが、目に見えて落胆している様子は、今のところはない。
今まで通り、熱心に勉強して、花を活けている。
俺に対しても、態度は変わらない。
家族に会ってみれば、何かが劇的に変わるんじゃないかと思ったのは、俺の妄想だった。
「日常の積み重ね、てやつだよ。結局はさ。
でも、光や兄弟にしたら生き別れになりかねなかったのが、今回のことで繋がったんだ。
俺達も、光が誰かの大切な人だって再確認出来た。
2人は王都でクリスマスデートもしたし、温泉旅行もしたし」
良かったんじゃない?
潔はそう言って笑う。
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