春夏秋冬
第2章 桜
「ふっ、うん、」
アルコール臭い口づけ。
綺麗な少女だった。アーモンド型の少しつり上がり気味の瞳も、どことなく光に似ている気がする。
だけど、光とは違って積極的な女だった。
幼さを残した顔からは想像できないくらい、中身は熟れていた。
…ちょうどいい、その方が楽だ。
自分から俺に口づけて、舌先を絡める。 指先が、俺の着て来たシャツのボタンを外しネクタイを引き抜いた。
着ていたシャツが脱がされて裸になった上半身を見て、少女は満足そうに微笑んだ。
自分の着ていたドレスも脱ぎ捨てると、細く華奢な体幹に収まりきらない程の豊かな胸が揺れた。だがその胸はつん、と上を向いていた。
「疲れているの?」
女は俺の顔を見つめて楽しそうに尋ねる
。
「ああ‥」
早く部屋に帰って休みたいと思っていた。
だけど、光と同じ栗色の髪と瞳が俺に向かって微笑んだ。それだけのことに心を動かされて、今ここにいる。
「いいわ、なら私がしてあげる」
少女は気の強そうな瞳を甘く潤ませて、俺にのし掛かかった。
「‥歳、幾つ?」
「18」
「そう、」
栗色の髪が波打って、俺の体をシーツに沈めた。幼い外見に反して、彼女の愛撫は、手慣れていた。
気持ちなんかなくても、
愛着なんかなくても、
気持ちよかった…。
けれど、光の肌を見たときのような、キスをもらったときのような興奮はなかった。
この少女は光ではない…。
俺が自宅にどじ込めた幼い宝物は、今日も泣いたままだろうか?
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