雪天使~お前に捧ぐカノン~
第4章 act,3:オーファン
だが残念ながら、こうゆう過酷な現状こそほとんど報道はなされないのが、世界中全てに於いての共通の現実だったりする。
でもただ一つ確かだと思ったのは、シャルギエルから見るとまるでそれらが犬小屋や鶏小屋の家畜小屋、動物園の猿系哺乳類を収納するねぐらといった、超低レベルな“棲み処”にしか思えずにはいられない事だった。
掘っ建て小屋に至っては、寧ろ“家”として成立しているのかどうかさえ理解出来ずにいた。
しかし紛れも無くその中には寒さを凌ぐ為数人で寄り添ったり、幾重もの布を体中に巻き付けている“人”がいる事だけは確かだった。
やがて気が付くと、随分複雑な道筋の先を行った路地奥のどん詰まりに辿り着いた。先程の密集居住地からは随分と離れた、入り組んだ路地裏である。
雪が降っているせいもあってか、周囲に全く自分達以外に人の気配はなかった。
一瞬何故こんな所に連れて来られたのか理解に苦しんだシャルギエルだったが、物音に気付いてそちらを見ると、そのどん詰まりに木造のドアがある事に気付かされる。
ギィと軋み音をたてながらロードが開けたそのドアの奥に、空間があった。先にロードが唸る様に言いながら中に入って行く。
「うぅ寒っ」
そして次にカノンが、キョトンとして突っ立っているシャルギエルに声を掛けて入って行く。
「どうぞ。入んなよ」
促がされるままに恐る恐るシャルギエルはドアの中に足を踏み入れる。
すると中は天井と四方を煉瓦壁に覆われた六〜八坪程の広さのある部屋らしかった。年季の入った煉瓦造りのこの部屋は、天井の四隅の内の一角部分が崩れ、バスケットボール大ぐらいの穴が開いている。
おいおいマジ大丈夫かよ、ここ……。
ついシャルギエルは思わざるを得なかった。
しかしその空間には、ドアの右手に古ぼけたタイル作りの水回り。その隣に備え付けられている木枠を組み合わせただけの棚には、食器らしき物やちょっとした調味料らしいのが並べられている。冷蔵庫はないが、どうやら簡易キッチンの様だ。
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