雪天使~お前に捧ぐカノン~
第21章 act,20:インビテーション
なぁ~に。時間はたっぷりあるんだ。そんなに焦ってヤツを嗅ぎ回るこたぁねぇ。せっかくの初のセレブパーティー、しっかり味わいな銀紫。どんだけウザイかよっく身に沁みる事だろうよ。
シャルギエルは愉快そうに思いながら、クスリとほくそえんだ。
「ハーイ! レディース&ジェントルメーン! ハッピーメリークリスマス!!」
突然真っ白なサンタ服に襟元や袖、帽子の裾などに金糸が豪勢に縫い込まれた衣装に扮した、豊かな白髭を蓄えた眼鏡の男が声を高らかに会場へ入って来た。
シャルギエルはアルコール抜きのシャンパンの入ったグラスを口に当てて、その似非サンタを一睨みすると相変わらず陳腐なお約束に、呆れながら溜め息を吐く。
まぁそれが本来クリスマスのあるべき姿なのだから仕方ないのだが。
そのサンタは周囲ににこやかに手を振りながら、真っ直ぐにシャルギエルの元にまずやって来た。
「ハ~イお坊ちゃま! 今年は良い子にしていたからプレゼントを持って来ましたよ!」
「……公衆の面前で、この年になってまで“お坊ちゃま”呼ばわりするのはいい加減やめてもらいたいものだな。まるでとんだ恥晒しだよ」
シャルギエルは相変わらず壇上に鎮座したまま、悠然たる態度で口にする。
「あ……し、失礼しました」
サンタクロースが十五歳の少年に頭を下げる図が滑稽で、周囲から笑いが沸き起こる。
「今年も良い子でいられたかどうかは些か疑問ではあるが、毎年恒例のお約束行事だからな。有難くプレゼントを頂いておこう」
不敵な微笑を浮かべ己のプライド高さをその表情に露にしながら、ゆったりと彼に向かって手を伸ばす。
「とんだ御謙遜を……。では、ハッピーメリークリスマス」
そう言ってサンタは手の平にスッポリ収まる大きさの長方形の包みを、この高慢なる少年に手渡すと、次は妹のミレイナのところに移動した。
ミレイナはそれこそ兄とはまるで違い、丁寧にドレスを両手で摘まみ上げて軽く膝を折り、おしとやかな挨拶でサンタを迎える。
「今年もいらして下さって大変嬉しゅう御座いますわ」
彼女は十歳ながらにして優しい謙虚な態度で、慇懃良ろしく応じた。その違いはまさに天使と悪魔のようだった……。
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