雪天使~お前に捧ぐカノン~
第21章 act,20:インビテーション
忍鷹が彼の元へ行こうとした時、すかさずハンサムな忍鷹に目を留めたお高く気取った少女が、声を掛けてきた。
「Hi! guy! 私はここの子息と令嬢と同じ学校に通っている繋がりで今回パーティーに招かれたメアリーよ。あなた、見ない顔だけどやっぱり子息との友人か何かの関係の人かしら?」
彼女はそう言って手の甲を差し出してきた。挨拶の口付けをしろという意味だろう。忍鷹はやれやれとばかりに一瞬だけふとそっぽ向いて、彼女の登場を疎んじながら溜め息を短く吐くと、改めて向き直りニッコリと笑顔を見せる。
「やぁ初めましてミス・メアリー。今夜は素晴らしい夜ですね。外に積もる雪。理想通りのホワイトクリスマスのこの日に、貴女の様なスノーホワイトレディーにお会い出来て実に光栄です」
忍鷹は彼女の手を取ると、軽くその甲に口付けをする。勿論、あくまでも挨拶としての演技だ。彼のその落ち着いた声と言葉に、彼女はウットリしている。
「ねぇあなた……名前はないの?」
彼女に質問に、内心舌打ちする。面倒な社交辞令だ……。と、その時また別の少女や年上の女性が四、五人も割り込んできたのだ。
「あら、あたくしも知りたいわハンサムガイ」
「ジャンセン家の御子息も超イケてるんだけど、高嶺の花で手が出しづらくって」
その高嶺の花が最早自分より身分の劣る、よりにもよってあの貧困(スラム)街出身の少女の恋人(モノ)になっているなど思いもしないだろう。もしそれを知ったら彼女達にとっては人生最大の屈辱と汚点になるに違いないだろうが。
「もしかしてモデルをしてたりとかするの? セクシーガイ」
「う、ぐ……っっ」
忍鷹は顔を蒼褪めこれ等の扱いに難儀して、シャルギエルに助けを求めるべく振り返った。
すると彼は人事の様にニタつきながら、口笛を吹く真似をしてからかって見せるだけだった。
あんの軽率男が! これでは身動き取れんではないか!! 忍鷹は腹の中で毒づきながら彼の態度に観念すると、必死に紳士の振る舞いを続けた。
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