雪天使~お前に捧ぐカノン~
第21章 act,20:インビテーション
「あの少女は貴方を気高き男にしてくれますよ。貴方があの子を愛し続ける限りね」
フランクの言葉に少し照れるシャルギエル。そしてソファーから落ち着きを失って立ち上がると、ボソリと言った。
「やっぱ大人の男の言う事は一味も二味も違うな」
そうしてシャルギエルは、入浴を終えて今度は映画を楽しんでいる忍鷹の元へと姿を消した。
そんな大人のフランクに生意気にもロードは、手を挙げて見せる。それにフランクはニッと笑顔を見せると、互いの手を叩き合って応じた。
そして夜の七時。
ジャンセン家主催のクリスマス前夜祭パーティーが執り行われた。
カノンとロードをシャルギエルの私邸に残して、忍鷹と二人で本邸のパーティー会場へとやって来た。
そしてまずはジーザス=クライシス及びイエス・キリストの生誕前夜を称えて、厳かに賛美歌から始まる。
シャルギエルはひとまずファミリーとして、ジャンセン伯爵一家の椅子に座った。他と違って三段高くなっている、最前部にある赤い壇上の貴賓席場に玉座が四つ並べられていて、両親を中央に父の隣にシャルギエル、母の隣にミレイナが鎮座している。
シャルギエルは背後の裾がツバメ型の真っ黒なタキシードで、袖に肩から手首に掛けて一本の赤いラインが入っている。中のシャツは袖と胸元にフリルが付いていて、胸ポケットに赤い薔薇。そして前髪も全て撫で上げたオールバックに、いつも後ろ一つに束ねている腰までの長髪を、ほんの少し高めの位置に今回は上げている。
どこから見ても歴史ある由緒正しき貴族の貴公子、端整な顔立ちの美少年さをリンと湛えた、見事なシャルギエル御曹子の姿だった。
……ふ。さすがだな。本来の姿を晒せばこうも立派になるとは。とても普段俺たちの前に見せている面影は微塵も感じられん。
忍鷹は内心すっかり感心しながら、彼から借りたストライプの入ったタキシードに身を包んで、フランクと同じ丸テーブルに立っていた。フランクの後から来た彼女も一緒に同席している。
ふとジャンセン一族の間近にあるテーブルを見ると、見覚えのある男が立っていた。
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