雪天使~お前に捧ぐカノン~
第20章 act,19:オルガナイザー
シャルギエルはカノンの頬を軽くピタピタと叩いて、ロードのベッドに足を滑り込ませる。すると彼女は更にクンクンと甘え声を出して訴えてきた。
「ダーメーだ。もう寝ろ。分かってくれよ」
甘えながら体をモジつかせる愛らしいカノンの姿を見て、シャルギエルはふと大人らしく微笑みながら、優しく彼女のハリのある柔らかい頬をピッと抓る。そして熱い吐息と共にカノンの耳元でそっと囁いた。
「甘い夢を見な(スィートドリーム)…」
そのまま唇を彼女の目元に移動させると、瞼に優しくキスをしてから彼はベッドに横になった。
暫くしてモゾモゾと名残惜しそうにベッドに潜り込むカノンの気配を、目を瞑ったまま確認すると、軽く口の中でホッと安堵の息を吐いた。
もしあのまま浮かされた熱に身を任せていたら、本能に逆らう事が出来なくなるところだった。しかし……。カノンもあんな風に甘えてくる時もあるんだな……。この上なく……愛らしかった……。
シャルギエルは胸をキュンとさせながら、ロードの方を向くとその眠れる男児をガン見した。そうする事で自分の中の興奮を落ち着かせようとしたのだ。ロードはスヤスヤと子供らしい寝顔を見せていた。スヤスヤと……。
「んうぅーん……」
ロードの寝返り打った腕が、バシッ!! とシャルギエルの横っ面に振り下ろされる。……ふ……。これでいい……これでいいんだ今は……。よくやったクソロード……。シャルギエルは内心ヒクつきながらも、お蔭で漸く冷静になってきた気持ちにロードに感謝しつつ、眠りに入った彼だった。
そうやって迎えた翌朝である。
今日は日曜日でロードの仕事は休み。ゆっくりと遅い朝をのんびりと味わって、ほぼ三人同時に起き出してきたのだ。
「ホラ。あんたの分。シャルギエルの家からテイクアウトさせて貰ったから、朝食にしな。冷めちまってるけど、何せ最高位の三ツ星シェフが作った料理だから絶品だよ」
ロードの褒め言葉を照れ隠しするように、カノンはアタフタとテーブルの上にテイクアウトした彼の料理を並べる。
「うちのシェフが焼くパンがまた最高に美味くてなぁ。麦芽の香ばしさがクセになるぜ」
余計多めに持ち帰った丸パンを手に取るなり、椅子に座ってシャルギエルはパクつく。
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