雪天使~お前に捧ぐカノン~
第19章 act,18:パシフィックタイム
「フ、フランク!! 余計な事言うなよ!!」
顔を真っ赤にして頭の方に手を伸ばすと、シャンプー台に溜めてあるお湯を彼へと払う。
「おっと! やーっぱり図星でしたか! な~るほど。君がシャルギエル様の……」
じっくり眺めてくるフランクに、カノンはたじろぐ。
「女を見る目、あるじゃないですか。この子は磨けば磨くほど輝きますよ。いい原石見つけましたね」
そしてリクライニングの背凭れを起こすと、タオルをシャルギエルの頭に巻いた。
「どうです? 宜しければ少しだけこの子の髪を弄って差し上げましょうか? 毛先も痛んでいるようだし、スタイルも大雑把でバランスが悪い。折角の美しい筈の赤い巻き毛の魅力も半減している」
どんなに服装で誤魔化しても素朴な髪型は垢抜けていない。
「え……!? あたいを……!? そ、そんな、髪弄られるの初めてだから緊張するしいいよ……。それに今までずっと自分で適当に切っていたから別に……!」
恥ずかしそうに慌てふためいて、自分の髪を両手で押さえるように撫で付けて誤魔化しながら、シャルギエルの目を見て助けを求めるカノン。
「いいじゃねぇか! やってもらえよ! いい機会だ」
カノンの気持ちを他所に気楽に同意するシャルギエル。
「そうそう。折角彼に見初められたんだろ。だったらもうそのつもりで更なる美を高めるのはレディーとしての常識。私はそこらのモデルを手入れするよりも、原石をどこまで磨いてその子の魅力を最高頂まで極められるかの方がやっていて楽しいんだよ。身分なんか関係ない。君がどこ出身かなんて聞く気もないさ。世の中ね。どれだけお姫様と呼ばれる立場でも、こっちからお断りなぐらいのブスもいるんだぞ。それに比べ美しかったら美しくなれる程元からいい原石を兼ね備えている女の子は、どんなに貧しくてもその魅力で本人が望まずとも上へと昇って行ける。何故なら、周りが美を求めて放っとかないからさ」
フランクはカノンを説得するように語ると、それに感心したシャルギエルがフランクと手を叩き合って椅子から立ち上がる。そして腕と腕を互いに交差させる形で合わせると、カノンにフランクは空いた椅子を勧めた。
「そうと決まればやってもらえよカノン。ちょっと俺のドライヤーが終わるまで待ってもらうが……」
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