雪天使~お前に捧ぐカノン~
第14章 act,13:不機嫌な愛の我がままな形
「バーカ。とぼけんじゃねぇぞ。あんだけギャアギャア言い争ってやっとこさ二人恋仲になったからにゃあ仕上げのキスぐらいはしたんだろ?」
「う、む。いや、その……」
シャルギエルがしどろもどろになるのを、ロードは立ち止まって彼を険しい表情で見上げた。
「してねぇのか!? まさか! 何やってんだよ普通お約束だろうが! ダッセー! とんだオクテBoyだな!」
「っるっせぇ! てめぇみたいなガキに――!!」
「ガキに? 何? 言われたくないって言いたいとか? この二年も前にとっくにキスを経験しているオイラに何か?」
「ぅぐ……っっ!!」
シャルギエルはロードに胸を指で突付かれ、上半身を引き軽く仰け反る。しかしロードはすぐにふと笑顔になると言った。
「サンキューな。カノン姉ちゃん愛してくれて。オイラもあんたが相手なら文句ねぇよ。カノン姉ちゃんを不幸にするような真似したら、そん時ゃオイラがあんたに報復してやるから覚悟しろよ」
「……おう。まかしとけ。あいつも姉思いの弟を持って幸せだな」
「ちなみに警告しとくがまだ先走るなよ! キスはともかくどうしてもの時は今はまだゴム付けろ! じゃ、行ってくらぁ!」
ロードは後ろ歩きでシャルギエルに指差しながら言うと、クルリと背を向けて駆け出して行った。暫く赤面して立ち尽くしていたシャルギエルだったが、ハタと我に返ってその遠ざかる背に向かって怒鳴った。
「ませた事言ってんじゃねぇこのクソガキっっ!!!」
するとそれに答えるようにロードの嬉々とした笑い声が響いた。
その遣り取りを遠くからドアを少しだけ開いて覗き見していたカノンは、気恥ずかしそうに肩を竦めると静かにドアを閉めた。カノンは愛するシャルギエルに、ロードが兄の様に懐いているのが心から嬉しかった。
幸せの足音が、聞こえてくるような気がした……。
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