雪天使~お前に捧ぐカノン~
第14章 act,13:不機嫌な愛の我がままな形
焦り喚くカノンの気持ちを無視して、彼はついに憤怒を露にして高雅さが剥離され始めつつ言葉を遮る。
「煩いぞゴチャゴチャと! そんな事等関係ない! 貴様は何か。そんな事を気にして恋を選ぶのか。そうじゃないだろう。恋と言うのは。一度でもそうなってしまえば、そのスイッチが入ってしまったのであらば、周りが目に見えなくなる程スパッとそれ一本に夢中になれるのが恋ではないのかよ! てめぇがこの前、そして今俺に言ってる告白は偽りか?」
「偽りなもんか! 何さ偉っそうに! こっちの気持ちも知らないで!!」
カノンは頭にきて髪を拭いたタオルをバシッとシャルギエルに叩き付けた。
「じゃあてめぇは俺の気持ち知ってんのかよ!」
そのタオルを奪い取る形でシャルギエルは声を荒げる。
「知らないね! 知らないから怖いっつってんのさ! 女はいつだって受身だからこそ傷付くのが怖いのさ! ましてやあんた程の相手だと尚更……!」
「苛付くんだよお前のその小っちぇえ考え! 俺をそんなクソな男に見てるって事かよ! 女は受身だと!? それを受け止めるのは男だ! 男なんだ! いいか! 余計な事考えずに黙っててめぇの心に従って俺にそいつをぶつけりゃいいんだ! 分かったか! だいたいじゃあ何で俺が今もこうしてここにいるんだよ! 一緒にいるんだよ! いちいち言わせるなこのバカ女!!」
シャルギエルはさも言い切ったとばかりに足を組むと、フンとそっぽ向いた。
「バ……!!」
カノンは声を発してからハタと気付いた。そうか……考えてみればこいつ金持ちのお坊ちゃまだからすっごく我が侭なんだ……だから意地っ張りな言い方しか出来ずにいるんだ。自分から告白する方がプライドが許さないから、私から言わせようとしている訳か。
「……何って超我が侭男」
「何だと!?」
シャルギエルが彼女の呆れ声にガタンと腰掛から立ち上がった。途端、カノンが抱きついてきた。
「――え……っっ」
硬直するシャルギエル。手にしていた彼女から叩き付けられたタオルを思わず床に落とす。
「だけど……そこがまた可愛い。ありがとうシャルギエル……私の気持ち、受け止めてくれて……」
「カ、ノン……」
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