雪天使~お前に捧ぐカノン~
第14章 act,13:不機嫌な愛の我がままな形
シャルギエルはぶっきら棒に吐き捨ててロードのベッドに身を投げる。と、同時に腹の上をドカッと強力にロードから片足で踏み付けられた。
「ぅぐは!! このクソガキ! いきなり何しやが…!!」
上半身を跳ね起こしロードの胸倉掴んで引き寄せると同時に、ロードはカノンから見えない位置側の彼のイヤホンをピッと指で弾き落とた。そして耳元に口つけたかと思うと、声を大にしてシャルギエルのそれに向かって吠えた。
「ガキはてめぇだ男の風上にも於けねぇ!」
「う!」
シャルギエルは咄嗟にその耳を手で押さえる。
「ささやかな抵抗がみっともねぇぜこのやきもち野郎が」
更にロードはシャルギエルのその手を掴んで、今度は小声で耳元に言い残すと、彼が掴む自分の胸倉の手を捻り払い、ヒョイと彼の腹の上に押し付けた足を退けた。
「それじゃあ先におやすみベイビー。オイラはもう少し姉ちゃんから本を読んで貰って今夜の夢のネタを増やすとするよ」
ロードはベッと舌を出して意地悪げにニッと笑うと、キョトンとしてテーブルでホットココアの入ったカップを両手に包んでいるカノンの元に戻った。カノンはよく分からないままシャルギエルの様子を気にしていた感じだったが、義弟にせがまれて再び静かに本を朗読し始めた。
シャルギエルは外れたイヤホンを耳に押し込んで二人へ背を向けると、自分の中に沸き起こる複雑な感情をなかなか処理しきれずに、半ば無理矢理曲を頭に叩き込みながら目をギュッと閉ざした。
どうせ長いウィンターヴァケーションで暫くは幾らでも時間があった。
夜中ふとシャルギエルは目を覚ました。いつの間にかロードも横で寝入っている。
薄闇の中彼は付けっ放しにしていたイヤホンを外しながらふと奥を見遣ると、ベッドとテーブルの間に渡してある細ロープに大布が掛けられ、その向こうからランプの光が薄っすらと漏れていた。
その向こうで何が行われているかはすぐ理解出来た。
気を使う感じに聞こえる静かな水音。甘いソープの香り。時々静かに聞こえる息衝き。カノンが毎晩恒例の湯浴みをしているのだ。それをぼんやりと眺めていたシャルギエル。
140