一週間の入れ替わり
第1章 第一話
観覧車は三畳くらいの大きさで、そこそこ広い。私たちは向かい合って座ったが、宗一は照れたように、やけに大げさにはしゃいで外の風景を見つめていた。私はしょうがないなと微笑みながらも、観覧車に備え付けてあるノートを手に取った。
このノートは、ここを訪れた人が記念に書き残すもので、私たちもカップルです、みたいなことを書き残そうと手に取った。どんなことが書いてあるか気になったので、少しばかりめくってみる。殆ど幼児の落書きに近い代物だったが、一つだけ気になる文章があった。
『私たちはカップルで来ました。夕方、この観覧車の中で恋人とキスしてみて下さい。不思議なことが起こります』
不思議なことって何だろう? 例えば、永遠の愛とか? 私は勝手に妄想して顔を赤らめた。
私はその時勘違いしていた。永遠の愛は誓うものであって、起きるものではないことを。
「……宗一」
「ん?」
彼が振り向いた瞬間、両手で彼の顔をがっちりホールド。そのまま勢いよく、私は彼と唇を重ねた。宗一は眼を見開いたようだったけれど、私は目を瞑っていた。だって、恥ずかしいじゃない。
その時、ちょっとした違和感を覚えた。目眩のような感覚だ。くらっと身体が下に落ちていくような気がした。
この感覚は何? 疑問を抱く暇なく、唇と唇が離れた。
「何だよいきなり。おい、蒼花。聞いてるか?」
ぼやけた視界に、男言葉を話す女の子の姿が見えた。
……女の子?
ここは観覧車の中だ。しかも、宗一と二人きりのはず。一体どこからこの少女は湧いて出たわけ?
「あれ? なんで俺がいるんだ?」
は? 何訳のわからないこと言ってるの、この子。そう思っていた私は、次の瞬間、驚愕に包まれた。
男言葉を話す女の子は、紛れもない、私自身だった。
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