色褪せたきらめき
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発行者:てきーら
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/12/20
最終更新日:2011/12/20 12:35

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色褪せたきらめき 第1章 入信
純粋に胸裏に染み入るものがあったのか、それからというもの彼女は此処の会の教えをひたすら信じるようになったのである。両親は反対したが、彼女は言う事を聞かなかった。学校が終わって放課後、友達との遊びの約束も自然と断るようになる。他人に対して孤疑や屈託のない性格で、とりわけ餅肌の彼女はここでも一目置かれる存在となった。何より梨依子は、特に宗教などと意識していなかった。それどころか、当時何事に対しても敏感で傷つきやすい一面を持っていた自分に胸を悩ませていた彼女は、ここでやっと自身の居場所を、人生の雛型を見つけられたようで嬉しかったのだ。行事には進んで参加するようになる。催し事が間近に迫る時期になれば、ダッシュで会の事務室に赴き、名簿の片っ端から電話勧誘していった。
「もしもし、わたし“きらめきの塔”の藤川といいます。こんにちは。実は今週の日曜日に長崎会館のほうで、素敵な演劇があるんですけど、よかったらぜひ参加して頂けたらと思いまして…」
梨依子は受話器を片手に頬に笑窪を作りながら嬌(なまめ)かしい声で喋り出す。そして、出席できる人にチェックを入れてゆく。また、ある時は普及雑誌の束を手にしながら、
「今日は何処に配りに行こうか、舞子」 と、天真爛漫な表情(かお)をして、自分が此処を知るきっかけとなった池袋駅前に行ってみようかなどと持ち掛けてみたりもした。梨依子の人懐こい表情と幼気(いたいけ)な声色に釣られるのか布教雑誌は直ぐさま通行人の手元に渡っていった。そして、行事に初めて参加してくれた人には尚更、愛想の良い笑顔を振り撒いて出迎えた。
「私達の心の中に神はいて、神を信じる人にはいつも私達の生活を見守っていて下さるのです」
人間とは不思議なものである。神の存在についてさえ、こういった彼女のような一宗教の会の主催者側になれば堂々と言えてしまうのだから。当時の梨依子もまさにそうだったのである。“神”は宗教を信じなければ、我々を見守る事の無い存在なのであろうか。そんな問いに疑問符を投げ掛ける時期が梨依子に訪れようとは当時の彼女には未だ知る由もなかった。
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