1825g
第1章 プロローグ
1825g。
私は誕生時の体重が2500gを切る未熟児だった。
早産で母のお腹から2ヶ月も早くこの世に生まれ出た私は、それによる呼吸器の未熟さゆえ、残りのお腹にいられたであろう時間を優に越す3ヶ月半を保育器で過ごす事になった。
手術後、一人で動けるほどに回復した母は保育器の中で小さく息をする弱々しい私を一日中ガラス越しに見つめ「大きく産んであげられなくてごめんね。」と謝り続けたという。
そして退院後も毎日かかさず母乳を与えに私の元へ来たそうだ。
まぁ子をもつ母親とはそういうものなのかもしれない。
3ヶ月半もよくやったものだ、とそれを聞いて当時小学校に入学しようとしていた私は、ただただ感心し、なんのありがたみも感じずにいた。
その母の苦労のおかげかは分からないが、結果的に私は身長157cm・体重××kgのいたって標準的な体型の女子中学生に育った。
今思えば、あれほど愛されていたのはあの時が最初で最後だったんじゃないか。
その後に起こる出来事を、母に愛されている事を当たり前だと思っていた過去の私が知る余地もない。
それは、私が1825gでこの世に生まれた日から10年と少し経ったある日に起きた、私の人生を狂わすほどの事件である。
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