魔怪探偵『ユート』
第2章 第二章:灰色のヒーロー
【二日後 街道】
あの日から早二日、唯は何の心配も無く大学へ通い、普通に生活していた。
だが、彼女の記憶の奥ではあの光景が短くも鮮明に根強く刻まれている。
今でも時々体が反応する。“アレ”と同じハイヒールの足音を聞くと・・・
大学の仲間と一緒に帰る時、偶々通ったハイヒールを履く女性に一瞬びくついたりもしたことはあったが、特に問題はなさそうだった。
だけど、唯はこのまま東雲優人と名乗った男の正体をよく知らずに終わらせる事は出来なかった。
だから、彼女は赴くことにした・・・名刺に書かれた住所へと。
唯「ええっと、確かこの辺の筈なんだけど・・・」
唯は調べた住所の場所へと近くまでやってきた所だった。
なんと、案外近いところで、家と学校の間を西に向かって徒歩30分で着ける程の場所だった。
唯「それでこのビルを右に曲がって、四軒目の所を・・・此処だ!!」
こうしてたどり着いた場所は一件の小さなビルであった。
高さは十メートルにも満たない物で、横幅は大型自動車が横に一台入るか入らないかの長さだ。
所謂、縦長のビルと言ったところだ。
唯「案内板がある・・・あった!! 三階、東雲探偵事務所」
案内板は全部で四階用としてあったが、埋まっていたのは三階の所で書いてある東雲探偵事務所という名前だけであった。
それにしても、このビル自体古い感じがしており、コンクリートの壁には所々とヒビ割れが起き、薄汚れている。
薄気味悪いと思いながらも、唯は上へと繋がる階段を登り始める。
このビルにはエレベーターがないらしく、移動手段は階段しかないからだ。
【ビル屋内】
このビルの第一印象は『異界』であった。
まだ昼間だというのに夜になったかと思えるくらいに中は暗く、蛍光灯は愚か、電球さえも明かりがついていない。
唯「間違ってないよね、確かに東雲探偵事務所って案内板に書いていた訳だし」
次第に場所を間違えたのかもしれないという錯覚を覚え始める。
そんな疑問を抱きつつ、暫く進んでみると、陽の光が漏れている場所が視界に写った。
確か、外側で窓がある部屋が見えたはずだから、場所からして奥の方へとたどり着けたようだ。
―――今日此処で、彼女は標識へと足を踏み入れる
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