魔怪探偵『ユート』
第2章 第二章:灰色のヒーロー
?「・・・もう家に帰りな嬢ちゃん、刺激の強い物を見てしまった後はお風呂に入って柔らかいベッドでネンネするのが一番だ」
そう言うと、男は唯から離れ出し、向こう側で停めてあったバイクへと歩き出す。
唯「あの、本当に有難うございました!! もし貴方が来なかったら私・・・」
?「まぁな、運良く“今回”は助けられたケースだから俺も上々な気分だ。そうだな・・・」
男は懐を探ると、一枚の長方形の紙を取り出し、それを唯の方へカード投げの原理で投げ渡す。
それを唯は慌てて掴み、見てみると名刺であることが確認できた。
唯「・・・ひがしぐもたんていじむしょ」
?「『しののめ』な・・・」
唯「あ・・・」
人の前で漢字の読み方を間違えるという失態に唯は恥ずかしくなった。
一度咳払いをした後、唯は名刺の内容を再び読み上げる。
唯「東雲探偵事務所 探偵 東雲優人(ゆうと)」
優人「もしも、何か気になる事があるというのなら下に書いてある住所を訪ねてきな」
そして、優人と名刺で名乗った男はバイクに跨り、エンジンをかけるや何処かへと走り去っていく。
唯「ちょちょちょっと待って!!」
唯は慌てて呼び止めるが、それはバイクの騒音によってかき消され、彼はそのまま消えていってしまった。
唯「何がなんだっていうのよ・・・」
その呟きは、夜の静寂と共に吸い込まれていく。
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