魔怪探偵『ユート』
第2章 第二章:灰色のヒーロー
?「いいかげん『開放(でて)こいよ』。そんな依代に留まり続けていたらお前の本体自体も危険に晒されるぜ?」
ハイヒール『ナメタマネヲ・・・シヤガッテエェェェェ―――――!!!!!』
ハイヒールの声が憤怒の込められた物へと変化する。
すると、ハイヒールを中心としてどす黒い『ナニカ』が溢れ出てくる。
それは次第に人の形を成して行き、最後には黒のクレヨンだけで紙に描いたような人間の姿となった。
?「やれやれ、ようやく本体出したか・・・予定より10秒ほど長くかかったがな」
影『シャアァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
相変わらず男の方はのんびりとした様子をしていたが、唯にはそれが危険な行為でしか見えなかった。
ハイヒールから粘りのある墨のような影が伸びて、男へと勢い良く迫ってきている。
唯「危ない!! 逃げて!!」
唯は咄嗟にそう叫んでいた。だが、影は次には大きなアギトの形へと変化し、男を噛み砕こうと近づき終えていた。
そこから唯は男が無残に噛み殺される未来を想像してしまった。
?「焦るなよ嬢ちゃん。こちとらこの類のプロなんだから・・・よ!!」
唯の必死の声に軽く相槌を打ち、男はそのままアギトが閉まるまでの間に再び懐から何かを取り出す。
素早く、“ソレ”を影に向け、カチッと音を立てた瞬間。
凄まじい淡緑色の炎が影のアギトの中へと入っていった。
影『ギャアァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
?「この俺が無防備に体を晒している筈がないだろう」
よく見てみると、男が持っていたのは一つのジッポライターであった。
そこから有り得ない威力の炎を出し、それによって影の体中を淡緑色の炎がまとわりつくように燃やしていた。
影『アツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ―――――!!!!!』
影は激しく暴れまわり、体を電柱やら道路やら壁やらと所々に打ち付けて炎を消そうとする。
だが、炎は消えることなく影の体を燃やし続ける。
しばらく影は暴れまわっていたが、次第に勢いが弱まり、その場に倒れ込むように地面へと落ちる。
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