舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
第11章 再会 梅花の娘
薄日射す昼下がり、静と夜叉丸が毛越寺から馬に乗って帰ってきた。毛越寺は、藤原氏二代基衡が造営した寺で、全山の堂塔四〇、僧坊五百人を数え、中尊寺を凌ぐ規模と、華麗さがあった。毛越寺の中心には、大泉が池がある。中央部勾玉状の中島があって、二人はそこに向かって石を投げるという他愛のない遊びに興じて帰ってきた。
「そ、そう言えば、さ、さっき柳之御所から御館様のお使いが来て、うえもんの……しょう……ただただ様がおられるかって」
吃り癖のある傀儡子のひとりが舌を噛みそうになりながら、思い出したように言った。
「右衛門少尉何とかの忠景様だよ。そんなえれぇ人がこんな処にいるわけがねぇじゃねぇかと追い返した」
別の一人が憤った様子でいった。
「使者は何と申していた?」
夜叉丸が訊ねた。
「へい、なんでも御館さまが急な御呼びだと」
夜叉丸は、それを聞くとすぐに飛び出した。嫌な胸騒ぎがして堪らなかった。
それを見送る傀儡衆達が不審そうに顔を見合わせた。
「夜叉丸様は、ほんとはえらいお侍様なのか?」
「そんなことねぇよ。俺等といっつも気さくに話をなさる」
「静よう、えらい身分違いかも知れねぇぞ」
静の顔が曇った。
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