舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第10章 富士川の水鳥
 忠度は涼しい顔で答えた。決死戦で恥を雪ぐ覚悟が見える。
 夜叉丸は、すぐに敵情偵察を願い出ると、弟の幸菊丸と同い年で若いが鬼姫衆十二神将のひとりである変化(へんげ)の宮毘羅を連れて、また川を渡った。小柄な宮毘羅は身軽さを身上にした独自の技の構成で大柄な者が多い十二神将の中でも引けをとらない。おまけに物真似が上手く変装も得意だった。夜叉丸は宮毘羅に倣い猟師の恰好に姿を変えた。
 彼は、頼朝が何を考え、何をめざしているのかを一番に探りたかった。ついこの前の八月二七日、石橋山の戦いでは、僅か三百騎しかいなかった兵力が、この二ヵ月で五、六万騎に膨れ上がったのはなぜだ。大庭景親、伊東祐親の軍勢が壊滅させられた。
 頼朝という得体のしれない存在に夜叉丸は気味悪さを感じていた。
――それとも舅の北条時政が後ろで操っているのだろうか。その可能性は捨てられぬ。所詮、人じゃ。弱点が必ずあるはず。
 そして、……
 そして、あやつは、来るのだろうか。奥州の老人は、平泉から出さぬと約束してくれたが、あやつのことはよく分かる。頼朝の噂を聞いてじっとしておれるはずがない。
 義経よ、おまえは、今どこにいる……

 十月二十一日であった。頼朝は富士川より黄瀬川まで戻ってきていた。このまま京へは進軍せずに鎌倉へ戻るようだ。京はたいへんな飢饉で、また平家の主力は健在である。深追いはせず足場を固めようというのだろう。
「夜叉丸兄さん、えらく派手なやつらがやって来ます」
 木の上で見張っていた身軽な宮毘羅が呆れた様子を見せるのに、身体を支えていた両手を離し、足の力だけで釣合いを取りながら枝を揺らし始めた。赤地の錦の直垂に紫末濃(むらさきすそご)の裾金物で飾った鎧を長めに着て、隣に大きな法師を従えていると宮毘羅が見たままを下の夜叉丸に伝えた。夜叉丸は思わず跳躍して宮毘羅の隣に並んだ。慌てた宮毘羅がもっと上の枝に跳んで身体を支えた。
「やっと来たか、義経と弁慶だ。軍勢の数が少ないが」
「ざっと、三十騎……」
――少なすぎる。秀衡様は、兵を貸してくださらなかったのか
 夜叉丸は、頼朝の陣に潜り込むことにした。
 ここに来てやっとと言うべきか九郎義経が、武者をひきつれて馳せ参じた。義経は、まだ見ぬ兄に会える期待感とその兄と共に平氏を倒したいと高揚し体中の血が熱くなっているのが一目でわかった。
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