舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第10章 富士川の水鳥
来るべき義経との戦いを想定して、夜叉丸が鬼姫衆を常日頃から訓練していたのだ。羅刹のように個人技に秀でた者からは手柄の行方が明確でないため陰口を叩かれるほど不評であったが、夜叉丸の剣技の高さと、鬼姫とは対極にいる情に厚い人柄のせいで表立って不平を述べる者はいない。
 今回の戦に鬼姫衆十二神将の内半数の六人が参戦していたが、彼らが核となって連携を取りながら配下の者を一糸乱れぬ統率でまとめていた。
 川の中に大きな水しぶきを上げて倒れこむ者、逃げ惑い浅瀬で溺れる者、武田勢は皆阿鼻叫喚の中で斃れていった。
 ただ、あまりに騒がしすぎた。幾万と水辺で生息している水鳥がその気配に驚いて、一斉に飛び立っていったのだ。次々に飛び立っていくその凄まじい羽音は天を揺るがした。雷のごとく夜空に木霊した。
「夜叉丸様、これでは夜襲はできません。戻りましょう」
 金剛が敵を全員殲滅させたことを確認して具申しに寄って来た。夜叉丸は、五条兼永についた血糊を川の水で洗い落としながら頷いた。

「どうしたわけだ。この有様は」
 夜叉丸らが平家の陣営に戻ってみると、誰もいなかった。いないどころか、甲冑、武具が散乱し、陣幕も多勢のひとの足に踏みつけられ、泥にまみれていた。陣中に同伴した遊女たちがおろおろと走り回っていた。
 夜叉丸は、真直ぐに忠度の陣に出向いた。
 紺地の錦の直垂に、黒糸縅の鎧を着た忠度は、自分の兵をまとめて様子を窺っているところであった。
「いかがいたしました、薩摩守様」
「皆、落ちたのよ。鳥の音に夜襲をかけられたと勘違いしての」
 余りにも慌て果て、疑心暗鬼が鳥の羽音を搦め手が回りこんで攻めてきたと錯覚させた。
 実際に武田勢からの夜襲もあったようだ。手柄を立てようと川を渡ったのは夜叉丸たちが遭遇した一団のみではなかった。所々に平家軍と武田勢の屍が折り重なって転がっている。
「馬鹿な、俺たちの所為か。それにしても臆病な……」
 誰ともなく鬼姫衆の中から吐き捨てるように声が上がった。夜叉丸も目の前の信じられない光景に、緊張の糸が解け急激な虚脱状態に陥ったが、気を取り直して忠度に指示を仰いだ。
「これより、陣屋を焼き、尾張まで引き上げる。そこで迎え撃つ」
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