舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 明日も来ると言ったな、今日は女と思って思い切り打ち込めなかったのだ。悔しさにそうは思ったものの身体は節々が痛くて立てなかった。
 戻って来た権蔵が血相を変えて駆け寄ってきた。

 翌日の午後、昨日は感じなかった粉雪混じりの風が、今日は松寿丸の肌を冷たく刺激した。昨日の禿と会った同じ刻限に松寿丸は一人でやって来た。弟には強がって見せたものの戦ったもの同士がお互いの力量を肌で感じることができる。情けないことに彼は勝てる自信がなかったのだ。平重盛邸の門前まで来たが、いたたまれなくなった彼は人通りのない小路に入ると、すぐに木刀代わりの杖で素振りを繰り返した。力任せに何度か振り下ろした時だった。
「脇をしめよ」
 後から声がかかった。日陰に入っていた松寿丸からは逆光になって顔がよく見えなかったが、声の主は豪奢な狩衣を着た若い公達のようであった。
「よいか、見ておれ。こうじゃ」
 その公達は黄金作りの太刀を引き抜いた。八双構えから気合が充実したのを見計らって大上段に振り被るや松寿丸の額に向かい、真直ぐに斬り下ろした。その速さもさることながら松寿丸の前髪に触れるか触れないかのところでキッと止めたその腕も驚くべきものである。公家の格好をしているが、間違いなく武士だ。
「ほほう、閉じなかったな。よい目をしておる。死線を彷徨うてきた目じゃ」
 その武士の言葉にあの雪の夜を思い出し、松寿丸の心が一瞬凍った。気絶して何も覚えていないが、気づくと追手が全員雪に埋れて死んでいた。
 松寿丸は、心の中を読まれた気がして身構えた。
 男は松寿丸の両肩を掴むと腰を屈め目線の高さを合わせてきた。
「強くなりたいか?」
 松寿丸は男の涼やかな眼を見返しながら黙ってこくりと頷いた。声を出さずとも松寿丸の心の叫びが轟くようであった。
「ならば我を信じよ、我の言葉に従え! さあ、今の我の太刀を思い出し、もう一度良いというまで振ってみよ」
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