舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第9章 法皇幽閉と源三位頼政の煩悶
「そうじゃ、さっきのわしの戦いぶりを見たろう。ちゃんと鬼姫衆筆頭殿の意にかなっておったわ。そういうことで太刀を返せ、夜叉丸」
 教経は無理やり夜叉丸から自分の愛刀を奪い取ると背に結わいつけた。いつもは不機嫌に見える教経の顔が華やいで見える。夜叉丸はわざと長い溜息をついて見せた。

 半月が雲に隠れた。その暗い屋根の上で通常より小さいが威力のある弓を弾く五人の傀儡子が待ち伏せていた。夜叉丸と安陀羅が音をたてないように気を配りながら闘っている横で、太刀を抜いた教経は、桧皮葺の屋根の色に紛れて近づいてきた残りの三名を一瞬で斬り捨てると胡坐を組み、二人の闘い振りを笑いながら見物していた。双刀使いの相手に手こずる安陀羅に見かねて、教経はその場で拾った矢を放った。
「なかなか面白い弓じゃ、思った以上に威力があるが、戦では使えぬの。遠くの的には、ぶれ過ぎて当たるまい」
 頚椎に深く刺さった矢で絶命した傀儡子の下から助けられた安陀羅が教経に向かって苦笑いとも愛想笑いともつかぬ顔で頭を掻いた。

 天井の板を静かにずらすと蜀台の暗い灯りが漏れてきた。そしてその中に平伏している頼政が覗けた。上座には三人の影が揺れている。中央の法皇と一段下がってその右に若い公卿、そして左には気高く上品な女性が座していたがよく顔が判別できなかった。
「仲綱の馬のこと聞いたぞ。難儀であったのう。さてさて、最近の平氏の横暴はどうじゃ」
 声を押し殺した法皇の問いに平伏していた頼政が顔を上げた。
「……平氏を横暴と仰せに?」
 夜叉丸は、法皇の顔が不愉快に歪んだのを薄明かりの中でもはっきり確認できた。
――何故あの年寄りを召されたのか
 法皇の腹の内がまだ読めない。同様に頼政も沈黙を余儀なくされているようだ。一般に源氏一族は、激しやすく血気盛んな行動をとる者が多い。しかし、源頼政は煮えきらぬ人物との評価もあるが、時勢を見る力は人並みならぬものを持っている。
「おぬしに三位の位を与えたのは誰じゃ?」
 法皇は意地悪く口先だけで笑っている。法皇が返事を強要するように身を乗り出した。
――頼政殿を三位に推挙したのは、清盛公であることを知っていて問い掛けている
 そっと首を傾げた頼政が、闇の中で朧に白く浮かぶ庭石に躊躇いがちな視線を送るのが見えた。しかし、庭石など見てはいないことは夜叉丸にもわかった。
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