舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第9章 法皇幽閉と源三位頼政の煩悶
  
 鳥羽離宮北殿の今夜の張り番は、鬼姫衆安陀羅組七名が受け持っていた。明け六つに婆耶羅組と交代する手はずになっている。秋の山から続いた雑木林の中が張り番の忍ぶ場所であった。しかし、この見張りは法皇が幽閉されてから始めたものであるが、すこぶる退屈な仕事になっている。暇なのであろう。目だけは表門にこそ向けられていたが、代わり映えのしない景色に誰からともなく朱雀通りですれ違った美しい町娘の話題で盛り上がっていた。
 そこへ夜叉丸と教経がむすびと酒の差し入れにやってきた。ふいに訪れた二人、特に一門の教経の存在に安陀羅組の全員が緊張した。
「能登守様、今日は何用で?」
 安陀羅が恐る恐る問うた。いつも気ままに鬼姫衆の訓練の場にやってきては、手ひどく痛めつける教経のことを皆苦手に思っていたのだ。ちなみに安陀羅とは鬼姫衆準幹部十二名を十二神将に倣い、鬼姫が名づけたものだった。
「いつもの罪滅ぼしじゃ、まあ飲め。冷えたであろう」
 そう笑って教経は器を安陀羅に渡すと瓢箪から酒を振舞った。あまり飲ませるなという夜叉丸の小言におぬしは酒が弱いからなと教経が笑った。
 教経を中心に車座を組み、しばらく酒盛りが続いた。
「何もない夜じゃ。こんなつまらん見張りは検非違使にでもまかせて解散しろ、夜叉丸」
 だんだん大きくなる教経の声に閉口しながらも夜叉丸はわれ等のすることに口を出すなと釘を刺した時だった。
 離宮の門前で人影が動いた。一人の老人が門の中に消えた。高貴ではあるが物腰は武士である。残された四つの影は従者なのであろう。門前で警護をしている平知康配下の北面の武士と談笑している。
「あれは源三位殿ではあるまいか……」
 教経が訝しげに首を捻った。
「紫宸殿鵺退治の頼政殿か?」
 夜叉丸の問いに教経が頷いた。藤原俊成から「今の世には頼政こそいみじき上手なれ」と評された歌人、源頼政こと源三位入道頼政である。保元の乱では源為義、為朝らと戦い、平治の乱では平清盛に味方した。その後の源氏衰退の主因ともなったといわれる。
 頼政は、仁安元年(一一六六)内昇殿を許され、平清盛の信頼も厚く、清盛により三位に引き上げられた。源氏で初めての公卿である。このとき、既に七十歳を越えていた。
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