舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
「大事そうに抱いておるその長き棒は何じゃ、杖術でもやるのか?」
 彼よりも若干背の低い目の前の娘からそれを構えよと命じられた。その居丈高な物言いに血が逆流したが、女子を相手にしたくない。彼は無視することに決めた。
「童(わっぱ)、受けてみよ」
 そう言うが早いか禿は手に持っていた三尺余りの木刀を打ち下ろしてきた。その鋭さに松寿丸の身体が反応して斜め後方に飛び退いた。死んだ兄の鍛錬のおかげなのか、松寿丸の持つ潜在能力なのか、敏捷な身のこなしであった。だが、少女の一歩踏み込んで彼の死角から斬り上げた木刀に右脇腹を強かに打ち込まれた。着ていた水干の菊綴がひとつ飛ばされた。
「童、どうじゃ、まいったか」
「なんの!」
 松寿丸は冷静さを無くし、杖を乱暴に振り回した。
――なめるな! オナゴといえども手加減はせぬ
 事実、近所に住んでいた同じ年頃の童等と戦の真似事をして遊んでいても、細身ながら恵まれた体躯の松寿丸は誰にも引けを取ったことがない。まして杖の長さを考えても圧倒的に有利な武器を持っているのだ。
 しかし、渾身の力をこめて杖を振り下ろしても、地面を叩いたり、空を切ったりするばかりで禿姿の少女に悉くかわされ続けた。息も上がってきた。
――消えた?
 松寿丸がそう錯覚するほどの素早さでいつの間にか後ろを取られていた。
「無駄な動きが多い。力で振り回してばかりじゃ、わらわに触ることすらできまい」
 その童女はまるで風が雪を吹き回すごとく敏捷に木刀を繰り出して来る。何度も強く打ち据えられたが、松寿丸の杖は彼女の直垂にさえ触れることができなかった。
 よく跳ねる。こやつは天狗の子か? 彼の意識が朦朧としてきた。
 松寿丸の体中から噴出した汗が風を感じた時だった。
 杖が巻き落とされるのと同時に肩口を木刀で手加減もなく強打され、ついに彼は力尽き地面に叩き伏せられた。
「わらわは、六波羅の那咤太子、人は皆勝手に鬼姫と呼ぶようじゃがな。明日もここに来やれ。また、遊んでやろうぞ」
――六波羅の那咤じゃと……、六波羅と名乗るからには平氏の縁者か
 失いかけた意識の中で空を見上げながら夜叉丸は考えた。弟の幸菊丸が腰をぬかしたのか、声も出せずに心配そうに兄の顔を覗いた。弟の前で松寿丸は泣くわけにはいかなかった。都とは、なんと恐ろしいところか、あんな女童が天狗のように強い。
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