舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第8章 流鏑馬の勝負
 遠慮の無い教経がその文に手を伸ばして読もうとするのを夜叉丸が慌てて止めた。訝しがる教経に夜叉丸は言いよどんだ。
 秀衡からの手紙が京にいる奥州の草に託されて届けられていたのだ。鹿ケ谷の顛末を夜叉丸なりにまとめて秀衡に報告していた。平家は、盤石である。ゆめゆめ義経に謀反を教唆することの無きようといった内容を書きしたためた。その返書である。ただ、そんなことが知れると、信義に背くと言われかねない。夜叉丸は迷ったが、長年培われた信頼の上で秀衡の返書を開いて見せた。
 鬼姫も教経も、夜叉丸と秀衡の関係に驚くと同時に、夜叉丸の奥州での活動が二人の常識をはるかに超えていることに衝撃を受けた様子であった。
 秀衡の返書には、決して盤石と考えてはいけないと書かれてあった。鹿ケ谷の一件は、氷山の一角である。そういう謀議が開かれることこそ、平家の土台を揺るがす元であり、表に出ない平家への不満が渦巻いているということだ。世の中の不満がどこにあるか判らぬ限り、それは、必ず平家にとって災いとなる。そういうことらしい。
「心配性の老人なのさ」
 夜叉丸は、秀衡の人となりを話して聞かせた。鬼姫が怒ったような形相で立ち上がった。
「ええい、面倒くさい。瓶子(へいじ)が倒れたと喜んでいるような連中は物の数ではない! 夜叉丸、松風を借りるぞ」
 鹿ケ谷にて、新大納言成親が瓶子の倒れたのを見て「ああ事の始めに平氏倒れたり」と揶揄したことに鬼姫は、憤りを見せた。
「手荒に扱うな。怪我をさせるんじゃないぞ。そうじゃ、後で飼葉をちゃんとやっておけ」という夜叉丸に、「承知したッ。ああっ、うるさい! 女のようにしつこい」と鬼姫は自分が女ではないような口振りで厩舎に向かって出て行った。
「夜叉丸よ、この話はここだけにしておけ」
 教経の気遣いに夜叉丸は、無言で頷いたが、鬼姫のいなくなった今、どうしても教経と勝負したい気持ちを押さえられなくなってきた。
「教経、久しぶりに立ち合ってくれぬか?」
 夜叉丸の誘いに教経が嬉しそうに立ち上がった。
「奥州で源氏の不埒者を多勢斬ったと噂を聞いた。返り血も浴びず阿修羅のごとく冷酷に人を斬るとも伝え聞いた。強くなったか?」
「噂が京に届くまでに勝手に大きくなっただけだ」
 謙遜してみせたが、満更でもなかった。
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