舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第8章 流鏑馬の勝負
鹿ケ谷の件が終わったからといっても、院との緊張関係は続いており決して平穏な日々というわけではなかった。後白河法皇の権カが清盛の武カの前に大幅に縮小されたが、法皇がこのまま納まる訳が無い。忠度からの裏の指令も続けざまに出るほど、目の離せない状態ではあった。
「忠景、松風を貸りるぞ」
 忠度を因りの親として初秋の良き日を選び夜叉丸が元服した。教経だけでなく、教経の兄の通盛や平知盛など忠度の呼び掛けに応じ平家一門の若手で主だった者が参列した。
 夜叉丸は固辞したが、そこで忠度より一字を賜り柚木次郎忠景と名付けられた。その名を夜叉丸自身は、忠度の影と理解した。
「夜叉丸でよい。しかし、またか」と言いながら鬼姫の髪に夜叉丸の土産の髪飾りがささっていることに気づいた。見られた鬼姫も決まり悪そうに、夜叉丸に会いに行くならそれを身につけて行くのが礼儀だと教経から強く言われたと弁解した。久しぶりのせいか、綺麗になったなと夜叉丸は思う。口に出さないのは、鬼姫が主筋であり、左大臣平重盛の娘という如何ともし難い身分違いのせいであろう。
「忠景殿、奥州の話を聞かせてくれ」
 今度は教経が入って来た。腰に帯びた備前友成の太刀の平緒、つまり太刀を佩く時に用いる組帯はやはり夜叉丸が奥州で買ってきた教経好みの派手なものに替えていた。
「おぬしもか……、夜叉丸でよいと何度言えばわかる。返事をせぬぞ」
「何をおっしゃる忠景殿。そんな非礼な……、第一夜叉丸という名は鬼姫が幼き頃勝手に名づけたものではないか」
――だから捨てられぬのよ
 俺と鬼姫を繋ぐものは夜叉丸という名だけなのだ。だから捨てたくないと教経に大声で伝えたかった。
「それそれ、鬼姫には扇寿というれっきとした名があるのにいつまでも鬼姫と呼んでいるではないか」
「それもそうじゃ。われらの間だけは、今まで通りでよい。な、教経殿」
 鬼姫も扇寿と呼ばれることに抵抗を感じていたのだ。自分が女であるということを認めたくなかったのかもしれない。時々夜叉丸は、鬼姫を見ていると自分の性を呪っているのではないかと勘ぐることがある。
 夜叉丸の奥州話に移った。
 三人にとって今この時が一番平和で楽しい時期だったに違いない。
 教経が文台の上に無造作に置かれた文に気づいた。
「覚慧からか? 毎度兄に便りを送るとは律儀な弟よの」
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