舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第8章 流鏑馬の勝負
大きく息をしながら、義経が馬を寄せてきた。
「夜叉丸、馬術は坂東武者のものぞ。よくぞここまで鍛えたものよ」
「だてに二年も奥州にいたのではない」
「二年もいたのにわしの前に出てきたのは初めてじゃな」
「俺は、毎日お前を見ていた」
 夜叉丸の軽い挑発にも、義経の表情は変わらなかった。
「明日もやろうぞ」
 義経は、激しく身体を動かした後の高ぶった気持ちを持続させたまま笑いかけた。脳みそが弾けたような明るい笑顔だ。敵側の夜叉丸に対し、旧来の知人のように接してくる義経に少々戸惑ってしまった。用心深くわからぬように太刀に手をかけた継信と忠信が傍にいなければ、今なら斬れると思えるほど義経は無防備であった。
 こいつは、大馬鹿じゃと心の中で呟きながら、明日都に帰ることを告げた。
「なぜじゃ、残念じゃのう。ここでわしの相手になるのはおぬしぐらいぞ」
 今までの夜叉丸との関わりは、義経にとって子供同士の喧嘩か、或いは戦さ遊びの延長ではないかと勘繰ってしまうほどの能天気さであった。
――確かに俺がこいつの親父を殺したわけではないが、平氏といえどもたかが家人風情と舐めておるのか!
「訳は、秀衡殿に聞け。それよりも早く平氏を攻めて来い。次は戦場で会おう」
 夜叉丸は、このままでは自分の心が乱れてしまいそうな気がして、わざと不機嫌な顔をつくり、その場を後にした。この屈託のなさに秀衡は惑わされたに違いないと夜叉丸は笑いがこみ上げてきた。義経の甘え上手に夜叉丸の仏頂面、御しやすい老人だと思った。
 そのまま京へ駆けた。
――久しぶりに教経と勝負じゃ。奥州の成果をみせてやる
 松風はまるで疲れを知らぬような力強い走りを見せてくれた。途中、夜叉丸は鬼姫に金細工の髪飾りを土産に買った。買ってしまった後で、少し後悔した。鬼姫が女らしい装飾品を喜ぶはずがない。が、鬼姫も十七なのだ。会わなかった二年間に変わったかもしれない。もともと義経が目につけるほどの端整な顔立ちをしている。しかし、夜叉丸はそれでも女らしい鬼姫をどうしても想像できなかった。

 風が少し冷たくなり、京の街が紅や黄に彩色された。
 久しぶりに忠度の屋敷に鬼姫が訪ねてきた。奥州から帰って来た夜叉丸がずっと鹿ケ谷の件で忙しくしていたので何度か会ったもののゆっくり話もできないままでいたのだ。
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