舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第8章 流鏑馬の勝負

 義経に会って行くのかと秀衡に聞かれ、「まさか」と答えたが、気が変わった。
 松風は夜叉丸の身体の一部のようにして駆けた。水面の眩しい渓流に沿って走ると松の梢を吹く夏の風が汗を吹き飛ばしてくれた。
 そして、義経の馬の鍛錬場についた。
 義経は、佐藤兄弟と三人で流鏑馬(やぶさめ)の習練をしていた。数人の下人は、佐藤兄弟に従う者なのだろう。弁慶の姿は見えなかった。
 夜叉丸は義経を挑発するように松風の限界の速さで駆け抜け、三個すべての的に鏑矢を当てた。流鏑馬の難しさは、馬を操る手綱を放して行うことにあった。どうしてもゆっくりと駆けるようになるのだ。
 佐藤継信と忠信の兄弟が駆け寄り馬前に廻りこんで夜叉丸を阻止しようと抜刀した。それを手にした弓で一気に打ち払い、二人とも同時に馬から叩き落した。
「義経、勝負!」
 夜叉丸は振り返って叫んだ。
 莞爾して義経は、夜叉丸に斬りかかろうとする佐藤兄弟を制すると、夜叉丸の後に続いた。夜叉丸と互角の速さで駆け抜けながら的の真中に鏑矢を連射した。勝敗をどうしてもつけよというならば、僅かに的のより中央を射た義経の勝ちであった。
 次は競い馬だった。夜叉丸が位置についた。阿吽の呼吸というか、互いのやりたいことが心で伝わった。義経が横に並んで、夜叉丸に赤い母衣を投げてよこし、自分は白く長い母衣を身に付けた。
「母衣の先が地面についた方が負けじゃ」
 義経は目礼すると同時に鞭を当てた。速さを競うというより、自分の技術で相手の進路を妨害するという高度な馬術が必要な勝負である。真っ直ぐ進んだかと思うと一転反対方向に欺く。土煙の舞い上がる中、勝負はなかなかつかなかった。たまたま長い石段があったのだが、二人とも全く速さを落とさず昇っては降りた。高度な技術である。夜叉丸が右の手綱を強く引き、騙しをかけると、義経は先を読んで夜叉丸の前に回りこんで来た。更に手綱を引いてその場で半回転し、逆方向に駆け抜け体勢を整えるとすぐ義経に向かっていった。松風は、まるで騎手の考えがわかっているように動き、夜叉丸を驚かせた。
 その中で、夜叉丸自身はまだ気づいていなかったが、この競い馬に夢中になっていくにつれ、いつしか義経を怨憎する気持ちが薄らいでいる。
 最終的に互いの母衣が絡まり同時に布が落ちて引き分けた。
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