舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第7章 旭日と朝霧 藤原秀衡
 突然、一頭の馬が狂ったように暴れながら秀衡の行列に向かって飛び込んできた。
 何人かの従者がその馬を止めようと立ちはだかったが皆蹴られて弾き飛ばされた。行列も乱れあわやというとき、紅葉した落ち葉を舞い上がらせて飛び込んできた男が馬の手綱をとり方向を変えた。男は誰にもわからないように馬の耳の後ろに刺さった棘を抜いて捨てた。
 男は馬を押えて平伏した。
「見事!」と簾の中から声がかかった。従者の一人が呼ばれ、その従者が男のところに行き、秀衡の言葉を伝えた。
「後で主の屋敷へおいでいただきたい。ぜひに礼を申したいとのことである。しかし、お見かけせぬお顔だが、身のこなしといいさぞや名のある方とお見受けいたした。ぜひ、ご尊名をお聞かせ願いたい」
「名乗るほどの者でもござらぬが、那須の国の住人で須藤与一郎祐高と申します。主を捜して当てのない旅を続けております」
 夜叉丸は咄嗟に旅の途中で会った弓のうまい青年の名を思い出し、その名に似せて答えた。
「須藤与一郎殿か、それではこのまま柳之御所までご同行願いたい」
 奥州人は、人が好すぎる。諾意を示しながら夜叉丸は多少の後ろめたさを感じながら付き従った。

 中庭で伏した夜叉丸の肩に秋風に吹かれて生気を失くした物寂しい枯れ葉が幾枚も散り落ちてきた。縁の上で暫時夜叉丸を観察していた秀衡から声がかかった。
「那須の国の住人須藤与一郎祐高殿、面を上げなされ。今日は危なき所、誠に天晴れな働き。礼がしたい。何なりと申してみよ」
 太いが優しい声であった。夜叉丸はゆっくり顔を上げ敢然と秀衡に視線を合わせた。
「何もございませぬ。我が技、未熟なれば、礼などに及びませぬ」
 秀衡も視線を外さず、しばらくじっと見据えている。
「男の目じゃ。まこと武士の目とは清々しいもの。気に入ったぞ。何もとらせずに帰したとあっては、秀衡一代の恥。砂金を持て。与一郎殿に持たせよ」と近習に伝えた。
「されば!」夜叉丸は、膝を進めて大声を出した。「されば、源氏の御曹司がこちらにおられると聞きおよぶ。我も源氏に縁深き者。御曹司が藤原十七万騎を率い、平氏を討つ時の先陣に加えて戴きたくお願い申し上げる。必ずや、平氏の大将首を御曹司の御前に供えてみせましょうぞ」
「馬鹿な。なぜ我々が源氏の風下に立たねばならぬ、無礼者! 天地が返ろうがそのようなことはない。つまみ出せ」
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