舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第7章 旭日と朝霧 藤原秀衡
 一年が廻った。何人かの源氏縁の者が、義経をして一旗あげようと下ってきたが、白河の関の役人から連絡を受ける度に、五条兼永の太刀があたかも上弦の月の形をなぞるように弧を描いた。夜叉丸は侵入者を義経と会わせる前にことごとく水際で排斥した。
 返り血も浴びず一瞬で仕事をこなす夜叉丸に検分役の役人達が戦慄した。
「柚木殿、感服つかまつった。まるで阿修羅王のようじゃ。いったい幾人を殺めれば、かように平静でいられるようになるものかの」
 検分役の老人が孫のような夜叉丸に、日頃から感じている疑問をつい口に出してしまった。
「あなたに命じられただけ、斃せば」
 鬼姫や教経と離れて一人で生活していくうちに夜叉丸の心が乾いてきたのかもしれない。心無い返事をしたと反省するや顔色の変わったその役人に深く頭を下げて馬を駆けた。当ても無く一里も走った頃、夜叉丸の身体が小刻みに震え始めた。こんな日は、必ず鬼姫と教経に無性に会いたくなる。そして自分の気持ちをぶっつけたい。本当は恐れているのだ。だから一気に片付けたいと思う。夜叉丸の気持ちとはうらはらに、剣の腕前が飛躍的に上がっていくことが皮肉であったが、そのことを他人にはまだ気づかれていない。
 言いて礼義を非る、これを自暴と謂い、吾が身は仁に居り義に由ること能はざる、これを自棄と謂う。
――このままではまずい。とんでもないことをしでかしてしまいそうだ……
 馬上、夜叉丸は壊れそうになっていく自分に慄然とした。

 秀衡はあくまでも平家に対して友好的な態度を示し続けていた。十七万騎を率いて白河の関を越えようとする姿勢は全く感じられない。
 しかし、秀衡は藤原四代目を義経に譲りたいという噂が夜叉丸のもとへまことしやかに流れて来た。秀衡の真意を測りかねた。
 無量光院参拝を終えた秀衡の牛車が秋の参道をゆっくりと進んでいる。
 無量光院は、奥州藤原氏三代秀衡が柳之御所の西側に建てた持仏堂ともいわれる寺院で、宇治の平等院鳳凰堂を模して建てたともいわれるが、平等院鳳凰堂よりも更に一回り大きい。本尊は丈六阿弥陀如来像であり、堂内四壁の扉には観無量寿経の教えを描いた障壁画が描かれてある。秀衡自身も絵筆を握り狩猟の絵を描いたらしい。
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