舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第6章 夜盗と傀儡師
 夜叉丸が平泉へ戻る途中、近江の鏡の宿に泊まった。夕暮れには、鏡山の山頂から梵鐘が響きこだました。鏡の宿は、滋賀県竜王町にある東山道八十六の駅(うまや)のひとつである。ここはかつて義経が一人で元服したところでもあり、二、三十人からの盗賊の襲撃を受けたところである。宿場の辻には義経により盗賊の五つの首が晒されたという。
 そこで、夜叉丸は奇妙な集団と一緒になった。二十名近くはいる老若男女入り混じった傀儡師たちである。現在の兵庫県西宮市にある西宮神社の近くには産所・散所(さんしょ)と呼ばれる地域があり、そこには『一畝不耕、一所不在』(一つの畝も耕さず、一つの所に定住しない)の「傀儡師」と呼ばれる戎かき、人形使いが住み「えびす神」の人形操りを行いながら全国を歩き回り、えびす信仰を広め、神社のお札を売る役割を果たしていた。
 その一座の十歳になる娘に夜叉丸は不思議なほど懐かれてしまった。忠度の侍女が夜叉丸の旅立ちに当たり、衣冠に「梅花」の香を焚き込めてくれたのだが、それが気に入ったらしく、匂いを嗅ごうと鼻を押し当ててきた。また、所々金銀で装飾された夜叉丸の持つ太刀にも興味を持ち、触らせてくれとせがんだ。幾分閉口したが、気になる程のことでもなかった。娘は、「やしゃ、見て、見て」と覚えたての舞を夜叉丸に舞って見せた。男舞であった。本当は、烏帽子、水干(狩衣)をつけ、太刀を佩いた男姿で舞う。水干が多く白色だったことより白拍子舞ともいわれた。
「申し訳ございませぬ、ご無礼をお許しくださりませ」とその娘の母親らしい者が何度も手を引いて連れて行ったがすぐに夜叉丸の傍に戻って来た。幼いにもかかわらず美しい母親似なのか細面に鼻筋が通り、涼やかな目に濃い睫毛をしていた。大胆なほど夜叉丸の顔をじっと見つめたまま視線を外さないその娘を夜叉丸はそれほど邪険にしなかった。どこか鬼姫の昔に似ていたからだろう。
 そしてその夜、異変が起こった。
 外が音を消しながらも騒がしく、屋敷を包囲している気配に夜叉丸は目覚め、五条兼永を引き寄せた。
 盗賊であった。
 このところ東国は飢饉が慢性化していた。食い詰めた者の何人かが盗賊になった。夕刻二人ほど下見に来ていたのに夜叉丸は気づいていたので心の準備はできていた。
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