舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第5章 陰陽師鬼一法眼 対 龍笛
 甲高く放笑した義経は、六韜三略を小脇に抱えると、平泉をめざして馬に鞭をあてた。
 法眼の門人が義経一向を追いかけようとしたが、馬術の力量差に空しく諦めた。鬼一法眼は、遠ざかる義経主従を眺めながら佇むよりほか無かった。法眼の足下には、我が娘とおびただしい数の門人の屍骸が累々と残されていた。

一部始終を木の上から夜叉丸と数人の鬼姫禿衆が眺めていた。
「なんじゃ、あの笛は? 法眼の術を打ち消してしまった。これほど離れていても頭が割れそうに痛い。木から落ちるかと思ったぞ」
 鬼姫がまだこめかみのあたりを指先で圧迫していた。
「見事じゃな」
夜叉丸は、半ば惘然としながらも感心したように呟いた。少人数でその何十倍もいる敵を相手にし、義経は勝った。心理作戦で相手を動揺させ、更に追い討ちをかけ恐怖を増幅させる。突然の恐怖に襲われたものは脆い。多勢であるほどその気持ちが伝染しやすく混乱を生む。夜叉丸は、実戦で見せてもらった。
「義経を見損なった。女子を盾に使うとは、卑怯。源氏の御曹司に有るまじき行いぞ」
 鬼姫は義経が皆鶴で矢を防いだ途端、自分が知っている悪態を総動員して義経を責めながら怒っている。夜叉丸は言葉に出せない寂しさを感じた。
「あいつに我々の常識は通用せぬ。半年義経を見ていて判った。古いしきたりや、我々が至当だと信じている合戦の作法に縛られていると、義経の前では命を落とすことになろう」
 奴には、合戦の美学などない。勝つか負けるかだけだ。ならば鬼姫衆も何をしてでも勝てる集団に鍛えねばならない。
「しかし、六韜三略を持って行ってしまった。よいのか?」
 真顔で心配する鬼姫が可笑しかった。
「構わぬ」
「しかし、秘伝の書ぞ」
「本を読んで戦が上手くなるなら、弟の覚慧は天下無敵じゃ。それに兵法書は他にもたくさん出回っておる。わざわざ京まで舞い戻り、手に入れるほどのものでもなかろう。所詮大昔の人間が書いたもの」
「……確かにそうじゃ。義経め、あまたの罪なき者どもを殺し、騒ぐだけ騒いで、挙句の果てが骨折り損か。よい気味じゃ」
「いや、そんなこと義経は知っていただろうさ。退屈だったのだ、毎日の暮らしが……」
 鬼姫が訝しそうに夜叉丸の顔を覗いた。
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