舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第2章 平氏の剣
 ふと、松寿丸は予期せぬ光景に思わず息を呑んだ。前方に乞食の幼子が長い着物を引きずりながら駆けていたのだが、通行人と勢いよく打ち当たったかと思ったら、すっと身体を通り抜けていった。またすり抜けられた方も何事もなかったように歩いている。幸菊丸がおずおずと松寿丸に身体を寄せ、恐々手を握ってきた。弟にも見えたのだ。松寿丸は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
 その時だった。体格から見て年の頃は、松寿丸より二つ三つ上らしい侍烏帽子に赤大和錦の直垂を着た少年が抜く手も見せぬ早業でその乞食の子を袈裟懸けに斬った。幸菊丸が「あっ!」と声を上げた。握り締められている手に力が込められた。しかし、斬られた子は、何があったかわからぬ様子で目を大きく開けてぼんやりしている。やがて何かに気づいたのかにっこり笑うと既に太刀を納めた少年に頭を下げて、すっと消えていった。
「あぶない、あぶない。都とは……。あんな子供が往来で刀を振り回す……」
 旅に疲れた権蔵が虚ろな目で呟いた。その独り言を聞いた松寿丸は、爺にはあの乞食の子が見えてないのだなと思った。
 太刀を鞘に納めたその武将姿の子は、松寿丸の方を振り向くと、恐ろしい形相で大股に歩いて来た。何とも錦の直垂が似合わぬやんちゃな顔だった。
「おぬしらにも見えたのか?」
 彼の問いに松寿丸はひるまず頷いた。幸菊丸が兄の背に隠れようとしている。
「死霊じゃ。おそらく空腹に自分の死んだことも気づかなかったのであろう」
 彼は松寿丸兄弟が頷くのを見てそれだけ言うと背を向けた。顔のいかめしさほど悪意はないらしい。思わず松寿丸はその悪意の無い部分に藁をも掴む思いで呼び止めた。
「待ってくれ! 平忠度様のお屋敷はどこじゃ? 教えてくれまいか」
 彼は立ち止まって不審そうに、旅の埃と垢に汚れた松寿丸らをしばらく見据えていたが、ぶっきらぼうに通りの奥に向かって指を指した。
「六波羅へ行け。このまま真直ぐ朱雀門に向かって歩き、五条のあたりで右手に折れよ。その突き当り付近でもう一度人に尋ねるがよい」
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