舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第5章 陰陽師鬼一法眼 対 龍笛
「これを」と渡された包みを解き、「まさしく六韜三略なり」と義経が叫んだときだった。
「それまで!」
 野太い声が、まだ明けやらぬ薄明かりの中で響いた。鬼一法眼であった。百人近い門人たちがいつの間にか義経らを取り囲んでいた。娘は後をつけられていたことに全く気づいていなかった。娘の心は余裕もないほど義経で満たされていたのだ。
「わが家宝、返してもらおう」
「断るといえば?」
「腕にかけても……」
 双方互いに睨みあったまま対峙した。義経は勝機を捜していたし、法眼は尋常でない強さの義経主従に警戒していた。奔出する緊張感に耐えられなくなった門弟の一人が義経に向かって矢を放った。
 義経は、自分の後ろに隠れておろおろしていた法眼の娘とすばやく体を入れ替えて彼女を盾にした。娘は、信じられない驚いた顔を義経に向け、九郎様と短く叫んだまま絶命した。
 法眼の娘婿で赤山禅院の湛海坊という力士のような剛勇の者が、義経に向かい大薙刀を振りかざして走り寄ってきた。
「卑怯なり。世に見捨てられた源氏は、女を盾にすることしかできぬのか。臆病者でなくば、われと戦え!」
 湛海坊は、凄まじく薙刀を振り回したが、義経は気合するどく薙刀の攻撃をかわすと一瞬のうちに首を刎ねた。首のなくなった湛海坊の身体は、二三歩、前に歩むと大きな音を立てて倒れた。
「かかれ!」
 娘を殺されて冷静さを失った法眼が叫んだのと同時に弁慶が、大仰に近くにいた法眼の門人を血祭りに上げた。佐藤兄弟も馬上より太刀を振り回しながら門人の間に飛び込み当たるを幸いに突きまくった。一気に周りが血の海になった。その海は、まるで満ち潮のように勢いよく広がっていく。
 恐怖が整然としていた隊形を無残に崩した。逃げ惑う者の多さに怯えが混乱状態に拍車をかけた。熊野神社の境内は一瞬にして地獄絵図に変わった。
 鬼一法眼は、九字を切った。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と九種の印を結び、最後に刀印を結びながら、地面が割れるような鋭い気合を出した。
 一瞬、その声に気が奪われた弁慶と佐藤兄弟の動きが止まった。
 冷たい空気がその場を覆う。法眼は、左右の人指し指を立て合わせた独鈷印に組み替えた。そして天地を振動させるような低く太い声で不動明王呪法を唱え始めた。
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