舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺―
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/25
最終更新日:2011/09/25 11:22

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舞う蝶の果てや夢見る ―義経暗殺― 第5章 陰陽師鬼一法眼 対 龍笛
切妻造の瓦屋根の上に待機している二つの影が動いた。佐藤継信と忠信の兄弟で、藤原秀衡に命じられて義経の護衛として平泉から供に来ていた。義経の支持でずっと潜んでいたのだ。弁慶の合図が早いか、兄の継信は弓で禿衆の一人を射殺した。禿衆が動揺して囲っていた隊列が乱れた時、弟忠信が宋渡りの煙玉を弓に括りつけすぐさま放った。濛々と煙が立ちこめ、夜叉丸達の視界を奪った。義経と弁慶は一気に庭を走りぬけ、塀の上に跳び上がった。
「法眼殿、あらためて参る! 扇寿殿また会おうぞ」
 義経は、各々塀の外に繋いでおいた馬に堀を飛び越えそのまま跨り、闇の中へ駆けて行った。夜叉丸は、追えなかった。

 悠然と一部始終を眺めていた法眼が夜叉丸らを皮肉った。
「さすが源氏の御曹司。一枚も二枚も上でございましたな」
 義経が弁慶と二人だけで平泉から出て来たと勝手に思い込んでいた夜叉丸の負けだった。
「法眼殿、情を移されたか?」
 そういい捨てて夜叉丸は、出て行こうとした。
「なんの、この世は、平清盛様のものでございます」
 鬼一法眼は、夜叉丸の背中に向かって上辺だけの繕った表情で笑った。
 法眼は、我が一族郎党にて身命に代え家宝は守り抜くと嘯いたが、彼の極められた慇懃無礼さに夜叉丸はこれから先、法眼を義経から護衛する気が失せた。金剛も同じ気持ちになったのだろう。帰る折、法眼邸の堀に向かって勢いよく放尿していった。
 しかし、夜叉丸は独自に昼夜に分かたず鬼姫衆を配置し、監視だけは続けた。

 法眼には、男子二人、女子三人の子がいた。次女にまだ男を寄せ付けていない十六歳の皆鶴という娘がいた。見目麗しく、情のある女だった。供を連れ船岡山へ薬草摘みに出た時のことである。夢中になって薬草を摘んでいるうちに供からの距離が離れていったことに気づかなかった。ふと顔をあげると小袖を被った女房装束の女が二十間ほど離れた所で手を振りこちらへ来いと合図していた。京でも見たことのない佳麗でたおやかな女がいた。娘はもっと近くで見たいという欲求もあり、ついその美しさに惹かれ覚束ない足取りで近寄った。透き通るような色白で、鉄漿をつけ薄化粧に眉を細く引いている。髪の間に見える眉墨は、鶯の羽風にも乱れそうであった。
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